社会人は組織人なのか、個人か?[三輪 昭子]

このようなアンケート調査は選択肢の作成によって回答が決まるところがあります。「働く目的」についての選択肢に、「自己成長のため」「社会人としての責任」「自己実現・能力を活かす」「やりがいを得たいから」が上記以外にありました。これらの選択肢には働く個人の個としての生き方が表れているように感じます。

この調査で筆者が注目したのは、別のところでした。職業別の結果です。「公務員」「経営者・自営業」「会社員」「自由業」について、それぞれの特徴を以下に記述します。

「公務員」は働く目的を「生活・家族のため」「社会、人の役に立ちたいから」「社会人としての責任だから」とする人の割合が各職業のなかで最も高く、最も低いのは「自由に使えるお金が欲しいから」。

「経営者・自営業」は、「仕事が好き、面白いから」「やりがいを得たいから」とする割合が最も高く、「社会、人の役に立ちたいから」が「公務員」に次いで高いのに対し、「貯蓄するため」「働いていないと社会性を問題視されるから」が最も低い。「会社員」は、「貯蓄するため」「自分自身を成長させたいから」とする割合が最も高く、「自己実現のため」「自分のスキル・能力を活かしたいから」「社会、人の役に立ちたいから」「仕事が好き、面白いから」が最も低い。

開業医や士業、芸術家などの「自由業」は、「自由に使えるお金が欲しいから」「自己実現のため」「自分のスキル・能力を活かしたいから」とする割合が最も高く、「生活・家族のため」「社会人としての責任だから」が最も低い。

以上から、「公務員」は仕事を通して「自分がこうなりたい」というより、「社会や家族を良くする」ことを目的としている割合が他の職業と比べて高い傾向にあるようです。近いのが「経営者・自営業」で、「好き」「やりがい」などが目的につながっています。大きな責任が伴う「経営」という仕事ができるのも、「仕事が好き」という思いがあるからこそでしょう。

一方「会社員」は比較的、自己成長や給料など、仕事を通して「何かを得る」ことが目的となっています。「自由業」は仕事を通して自分の目標や夢を達成したいという「自己実現」や、「自分のスキル・能力を活かしたい」という欲求が強いようです。ここには、組織人として何かを得ようというのではなく、個人を表しているのではないかと考えました。

改めて問います。社会人は組織人ですか、個人ですか。社会人とは、どんな人ですか。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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