日光市で地元企業が協働、地域密着で商品開発[長浜 洋二]

一連の議論の中で、社会的責任に関する国際規格「ISO26000」でも取り上げられている組織統治や労働慣行などの漠然としたものよりも、CSRに馴染みが薄い中小企業にとっては、より直接的に地域を知り、地域に知ってもらえるような取り組みが良かろうということになりました。その中でも、本業(売上)にも直結する「寄付つき商品」を展開することに決定しました。

2014年7月には、「コーズマーケティング・コトハジメ」と題し、第3回目の研修を実施。コーズマーケティングの市場動向や実践事例を中心にお話をしました。またその中で、具体的に寄付つき商品の企画作りに着手しました。

企画には、ターゲットの設定、特定の寄付つき商品の選定、販売価格と寄付金額(率)の設定、店頭での接客手法やパッケージ開発、商品の陳列方法などを含む、売上拡大に向けた販売・プロモーション戦略の策定、寄付に対する見返り(お礼・報告・特典)の検討、販売目標・指標の設定、そしてプロジェクト全体としての広報戦略の検討などを行いました。ちなみにこの段階では、参加企業数は7社。そして、プロジェクトの名称は「スマイル日光プロジェクト」に決定しました。

こうした半年以上にわたる準備期間を経て、2014年9月から2015年2月までテストマーケティングを実施。その間、10月と年明け1月に進捗報告会を開催し、設定した目標・指標に対する実績の振り返りと、成功・失敗事例の共有、目標達成に向けたリカバリー策の検討などを行いました。

特に1月の報告会では、プロジェクト後半での盛り上げ(追い込み)に向けた企画として、2月11日に日光市今市で開催された「花市」でのブース出展「花市DEスマイル」について議論しました。具体的には、ブースの設計(商品・パネル展示と販売の2面展開)、募金箱の設置と市内高校生の協力による募金活動(2時間おきにカウント&実績表示)、甘酒のふるまい(無料)による呼び込み拡大と見込み客の獲得(対価としてFacebookいいね!やアンケート回答、募金のいずれかを推奨)などを決定しました。

テストマーケティングを兼ねた5ヶ月のプロジェクト実施の結果、当初目標10万円に対し、14万円強を獲得することができました。肝心の寄付先についても参加企業間で議論を重ねましたが、最終的には、日光市社会福祉協議会が推進する日光市内の高校生ボランティアネットワーク「縁人(えんびーと)プロジェクト」に寄付することにしました。

最終的にプロジェクトに参加した企業数は、当初の7社から15社へ倍増。参加企業からの口コミや評判が奏功した結果となり、目標金額の達成に繋がりました。参加業種も、印刷会社、弁当屋、酒店、呉服店、タクシー会社、農園など多岐にわたっており、寄付の方法も、注文を受けた名刺の売上の5%、日本酒1本につき100円、洗顔ミトン1個につき10円など、各企業の販売戦略が反映されたものになっています。

<スマイル日光プロジェクト参加企業と寄付つき商品企画一覧(2015年2月現在)>

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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