2つ目は、農地の集約化と役割分担の明確化。農業にかける個々の農家の思いはあるが、事業の持続性・効率性という点からは集約化・大規模化は不可避であろう。自分の土地を守るためだけならば小規模でも構わないが、担い手不足や持続性に不安を抱くならば、大規模化以外方策がないことは自明だ。
日本の複雑な地形では難しい面もあるが、大規模化・集約化は時代の要請でもある。オランダでは、複数の農家が共同組合を結成し、760haもの耕地で露地栽培を行っている例も多い。
3つ目は、国際志向である点。オランダは、常に貿易を念頭に考えてきた国民性がある。他方、我が国は内需で十分に賄えたため、国際競争にさらされることはなかった。
しかし、今後人口が減少し、高齢化が進めば、国内の需要が大きく減る。中国や韓国が施設園芸の導入を積極的に進め、生産力強化と低価格化を図れば、我が国の農業は立ち行かなくなる。農産品の輸出戦略は政府の方針でもある。
4つ目は、産業としてのサプライチェーンの構築にある。サプライチェーンの段階ごとに役割分担が明確で、収益の分配についても社会的コンセンサスが得られている。種、苗、施設の資材などの各メーカー、生産者、物流が完全に分業化され、それらがシステマティックにプライチェーンを構築している。生産者は、例えるなら、トヨタの製造工場のような役割を担っている。
オランダのやり方がすべて理想的なわけではない。人口をはじめ、歴史的な背景や競争環境、雇用や、移民政策など日本と大きく異なる点も多い。しかし、日本の農業が産業強化していくためには見習うべき点があまりに多い。
自分たちを特別視する意識は、全ての業界を通じてサステナビリティを阻害する。持続的な社会の構築には、常にマーケットを念頭に置いたグローバル志向を持ちつつ、サプライチェーン全体でのサステナビリティを考えていく必要がある。
課題解決に向けて、大学を中心に産学官が連携してナレッジを集積し、社会と共有していくことも重要だ。これは途上国におけるCSR の推進とも符合し、企業のCSRの取り組みと考え方は同じだ。
(この記事は、株式会社オルタナが2013年12月5日に発行した「CSRmonthly 第15号」から転載しました)