コンセプトの共有こそが活性化のカギ【戦略経営としてのCSR】

地域全体で一貫した主旨でコンテンツを考えることで、付加価値を創造する。コンセプトをベースにリベラルアーツ的思考(第8回)を実践することだ。

なお、具体的なコンテンツの検討においてヨソモノを巻き込んだ議論(第5回)が有用だが、コンセプトなき議論は「事例紹介」のような思い付きのアイデアしか出てこない。価値を高め、活性化につながる有益なコンテンツの議論には、コンセプトの共有が前提だ。

企業のステークホルダーダイアログでも同じだ。企業のコンセプトが共有できないまま有識者
とコンテンツの議論をしても、一般的な課題は出ても、企業価値の向上につながらない。

■「郷土教育」で地域に貢献する人材の育成を
コンセプトの浸透には、教育との連携も重要だ。初等・中等教育と連携し、青少年のうちに郷土教育を施すことは、将来地域に貢献する人材の育成につながる。従来の道徳教育副読本などによる知識の習得ではなく、地域のコンセプトを共感し・自分ごと化できる教育を指す。

青少年期にしっかりとした郷土教育を受けていれば、青年期に地域外に出たとしても、経験を積み、最も活躍が期待できる時に、郷土への貢献を考える人が多いのも事実だ。

また、郷土教育は非行少年を減らすとの調査結果もある。経営理念が浸透している企業ほど、コンプライアンス上の問題が少ないことと同じだ。コンセプト(理念)の共有・浸透は、所属意識や自尊心・自負心を高め、正しい行動に導く。

高等教育との連携も効果的だ。県民の税金を原資としている県立大学では、県内の学生を受け入れるべきとの議論もあるが、むしろ、県外からの学生に大学4年間当該地域の郷土教育を行なうことは地域のファンづくりにもなり、将来有益な人材確保につながる。

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大久保 和孝

株式会社大久保アソシエイツ代表取締役社長(公認会計士・公認不正検査士)。慶應義塾大学法学部卒。前EY新日本有限責任監査法人経営専 務理事(ERM本部長)。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、商工組合中央金庫取締役、セガサミーホールディングス監査 役、LIFULL取締役、サーラコーポレーション取締役、サンフロンティア不動産取締役、武蔵精密工業取締役(監査等委員)、ブレイン パット監査役、他多数の企業等の役員に就任。

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