編集長インタビュー: 鎌仲ひとみ氏(映画「ミツバチの羽音と地球の回転」監督)

■日本には何が欠けてるのか?――メディアの問題

鎌仲: でも日本は情報が隠蔽され続けてきてしまった。

森: では何から変えるという中で、日本に国民投票という制度をきちんと入れれば解決される問題なのでしょうのか。

鎌仲: いやそういうことではないと思いますね。

森: 何が必要だと思いますか?

鎌仲: まず情報開示ですね。ただメディアが自分たちのスポンサーに縛られることなく、きちっと書くべき。自分たちで考えて、言われたから書くのではないことをやらなきゃいけない。誰のためのメディアなのかというと、今はまさしくスポンサーのためのメディアになってしまった。

森: いやでもね、僕はそれだけじゃないような気がする。何故かというと、メディアはスポンサーの悪いことが書けないっていうけど、トヨタはリコールの問題であれだけ批判されたわけですよ。書くときは書くのです。常に悪口を言えないわけではない。ところが問題なのは、書くと書かないの分水嶺はなにかということを考えた場合、日本のメディアは圧倒的に行政が動いているかどうかなんですよ。つまり刑法とか、会社法とか法律に違反していたら書ける。

鎌仲: お墨付きがついてればね。

森: アメリカでもあれだけ騒ぎになったのは、アメリカの役所が動いたからなんですよ。アメリカの役所が動かなかったら日本のメディアはトヨタの悪口は言えなかった。つまり日本のメディアはそういう意味で、行政の判断にすごく依存している。行政は動かないけど、うちは書く、ということは昔はちょっとあったけど最近はどんどん減ってきている。

鎌仲: それは記者クラブだからですよ。

森: そうですね。

鎌仲: 私が映画で提示したかったのは、そうやって行政がとか、メディアが、と言っていると逃げ道はいろいろあるのですが、自分たちは何をするのかと問われた時にできることがいっぱいあるということです。電力会社を批判できないのだったら、別のもっと変えれる方法とか、情報もあるので、そっちを出してくれたらどうでしょう。

森: 新聞社でも割合、若い記者のほうが問題意識があったりして。年取れば取るほど組織人間になっていくわけです。大学出て、新聞社に入る若者ってのはそりゃあ正義感に燃えていてね。

鎌仲: そうかな。

森: そうですよ。そういう人だけじゃないかもしれないけど、僕はそういう人が大半であると信じたいですよ。それがだんだん、20年30年いるに従って、正当な判断力がもてなくなってくるという不幸がありますね。

鎌仲: 思考停止の親父どもがこの国を悪くしてるよね。でもそういう人たちを責めていても仕方がない。新しいことをやらなきゃだめだよね。

■シニアはオルタナティブなメディアの味方?

森: 一つ面白い現象があって、オルタナという雑誌の支持層で顕著なのは、20代30代前半の若い連中、真ん中40代50代がすっぽり抜けて、60代、70代の人たちなのですよ。

鎌仲: そういうことあると思いますね。

森: すごく良心的ですよね。高度成長を支えたんだけど、それでよかったのかという反省があるようです。そういう人たちに支えられてるのがすごくうれしいので、この映画もおそらく似たようなところあると思う。60代、70代の人に見てもらいたい。

鎌仲: それは言えてる。若い人たちはまだ人生経験も少ないし、ネットワーキングするスキルも、具体的に顔と顔を合わせて、人と人の関係を築いていくスキルも足りないし、それができる能力は60代以降の人たちのほうが高いと思います。

森: そういう人たちを味方につけて、例えばそういう人たちがかつての後輩の大企業の幹部を叱ってもらえたら、ちょっとは効くのでは。

鎌仲: 何%くらいがオルタナの読者なんですか?その60代以上の。

森: オルタナの読者のうち多分2-3割はシニアだと思いますよ。

鎌仲: 例えばこの映画をオルタナに紹介して下さって、上映会にオルタナの読者が何人くらいが観に来てくれるでしょう。

森: 5人の人にプレゼントとかしてもいいですか。(*読者プレゼントは終了しました)

鎌仲: もちろん。

森: 了解、了解。

鎌仲: やっぱり人が動かないと。映画観るだけじゃなしに、実際はもっと違うことで動かなければならない。

森: これは世代による濃淡があると思います。若い人はもちろん、40代、50代をすっとばしてシニアの人に見てもらえたら僕はちょっと面白いと思います。

鎌仲: シニアにはぜひ観てほしいと思います。これから高齢化社会で、祝島の中で80っていったら若いよって言われるのですから。阻止行動でガンガンやってる人たちは皆70―80代なのです。

森: シニアを味方につけるっていうのはオルタナティブなメディアの一つの作戦になるかもしれない。

鎌仲: シニアを味方につけるための戦略ていうのにはどういうのがあるんですか?

森: いやそれに実は気づいたのがここ半年くらいなんですよ。これからどうしようかなと。僕らも考えますから一緒に考えたいと思うんですけど。とにかく「オルタナ応援するよ!」って言ってくれる人が今半分以上シニアです。

鎌仲: 人口比率的に言っても多いのよね。

森: マジョリティですよ。そのうちの一人が実の叔母で、一人で5冊買ってくれる。友人たちに読みなさいって配ってくれて。ありがたい話ですね。

鎌仲: そうですね。

森: ちょっと脱線しちゃいましたけど、シニア層がひょっとしたらオルタナティブなメディアの味方なんじゃないかと。これはまだ仮説ですけど。

鎌仲: 仮説だね。

森: なんかいけそうな気がする。

鎌仲: なんか特集組んだら?「アラカン環境派物申す」みたいな。

森: アラカンって言葉あるのですか?

鎌仲: うん、還暦の。アラフォーとか。

森: アラカンよりもうちょっと上かもしれないね。

鎌仲: 「ニューシニアの逆襲」みたいな。

森: 60だったらまだ会社にいる人もいるじゃないですか。65から80。

鎌仲: 私のこのプロデューサー76歳ですよ。頭柔らかいですよ。若い頃は学生運動をしていて。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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