■市民参入支える強靭な民主主義
もちろん、地域セクターが牽引するエネルギーヴェンデは一筋縄ではいかない。大手電力会社や巨大資本中心の経済界は、規模にして9兆円というドイツの電力市場で築いた既得権を守ろうと、政治力をも行使して抵抗。これに負けじと14年1月、市民エネルギー事業を政治的に代弁する「市民エネルギー同盟」が発足した。
ドイツでは市民が電力の既得権に切り込むべく、自然エネルギー事業の経営に乗り出し、その経済力を根拠に政治的ロビー活動にまで着手。その背景にあるのは「社会を他人任せにしない」という強靭な民主主義だろう。
本書は、市民がエネルギーをめぐる経済活動においても主体になるべきとの視点に立つが、エネルギーヴェンデの土壌となっているのがチェルノブイリ事故や東電原発事故を契機にわき起こった脱原発運動であるのは興味深い。エネルギーヴェンデでは市民運動、経済活動、政治参加が連関しているのだ。
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