サステナビリティ戦略と新興市場

ヒューレット・パッカード社では、人への貢献、経済発展への貢献、環境保護への貢献を調和させ、事業活動や技術革新を通じて利益をあげつつ社会的課題を解決し、だれもがよりよく暮らせる未来を実現すること(Living Progress)を目指しています。この取り組みの一環として、2010年、ケニアで初となるE-wasteのリサイクル施設をアイルランドのNGOとともに設立し、国際的なリサイクル基準に基づき操業を開始しました。

このリサイクル・パイロット・プロジェクトは、貧困層がE-wasteを自ら焼却処理して銅を取り出し販売する金額よりも処理前の状態で本施設が買い取る金額の方が高いため、銅線を焼くことをやめるという行動変化をうみました。その後ケニアの首都ナイロビに施設を移転、イギリスのリサイクル業者やドイツの金融機関と連携した2013年12月からは、約20人の回収者を組織する回収センターを50ほどに増やし、持続可能かつ他地域への移転可能なモデルになっています。

本プロジェクトにより推計2000人の雇用を生み、銀行口座をもたない人々にも携帯電話によって確実かつ安全に賃金の支払いができる仕組みを構築しました。環境保護、人々の健康づくり、雇用創出を担うプロジェクトになったということです。

アッシュ ロイ氏(jEDマネージングパートナー)からは、新興国におけるスマートシティ構築と質の良い仕事づくりを目的とする投資プロジェクトについて報告が行われました。

スマートシティは都市生活のベストプラクティスです。省エネ・省資源、低炭素に加え、モバイルアプリケーションからもアクセスできプライバシーも確保された統合ネットワーク、きれいな空気や広くて安全な公共グリーンスペースなど、「サステナブルな都市化」を可能にするものです。

投資を呼び込み、世界規模の一流企業や高賃金を得て働く高スキルの労働者が集い、生活にかかるコストを低減する次世代型都市として、とくに途上国政府はスマートシティ構築に積極的です。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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