サステナビリティ戦略と新興市場

ロイ氏は、このようなスマートシティを企画し新しい技術を導入するには、人々の行動を変える必要があるが、先進国の人々よりも途上国の人々の生活スタイルを変えていく方が容易であると指摘しました。先進国の人々は環境問題に関する知識を持ち省エネの重要性を理解していても、必要であればコスト負担をすれば済むことであり、なかなか行動を変えるには至りません。

一方、技術の進歩と分散化は途上国の人々に大きな変化をもたらしました。携帯電話のような小さな端末であっても格段に容量が増えて操作性が上がり、生産コストが下がったことにより途上国の人々が容易に購入することができる値段になっています。技術が人々の行動を変えており、この技術をいかに効率的に利用するかということを問題意識としているということです。

現在、インフラが整備され交通の便もよく、人的資源も豊富で活気に満ち、投資家も関心を持つインド国内の4地域を対象に導入可能性を検討しているとのことです。

3氏から報告されたそれぞれの取り組みは、実施国や内容は異なるものの、いずれも:
① これまで財やサービスへのアクセスが乏しかった地域において、雇用機会や生活の質を向上させる機会をうむためのビジネスをつくっていること、
② 情報通信技術の発達を背景に、情報通信インフラを活用し、地域社会、企業、行政、NPOなどと連携してプロジェクトづくりを進めてきていること、
③ 地域社会の人々の参加を得て、人々の行動変化を生み、活動地域を少しずつ広げていること、

といった特徴をもつ、貧困問題や環境問題を解決しようとする取り組みでした。本セッションの参加者からは、東日本大震災の被災地における雇用創出を考える上で参考にしたい、先進国と新興国では人々の行動変化をうむ要因には違いがみられるのでは、というコメントがなされました。

出所:ITU (International Telecommunication Union) the key 2005-2014 ICT data, http://www.itu.int/en/ITU-D/Statistics/Pages/stat/default.aspx

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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