大賞の「えがおつなげて」は、山梨県の耕作放棄地で三菱地所や博報堂といった大企業の社員や家族と一緒に開墾した土地で純米酒丸の内を生産したり、間伐材を住宅建設用に利用したりしている。農村の資源と都会に暮らす人々を結び地域再生を図る手法は、全国のモデルになりうるすばらしい取り組みといえる。大賞が授与されたのもむべなるかなである。
コペルニクは、途上国の貧困を削減するため、ニーズに合った先進企業のテクノロジー(製品)をサイトで紹介、あわせて購入資金を寄付者から集めるというオンラインマーケットプレイスを採用している。寄付金で購入した製品は現地のパート-ナーNGO に安価で販売してもらうユニークな仕組みである。
ユニチャームのサウジアラビアでの女性専用工場は画期的だ。イスラム圏では女性の就業者が少なくサウジアラビアの世界男女格差指数は135 カ国中131 位である。同国では、イスラムの戒律で女性は家族以外の男性に顔や肌を見せてはいけないのみならず、同じ部屋にいることや話すことも禁止されている。
女性だけが働く工場の存在意義はそこにある。また、生理用品が社会に広まることで、それまで、生理を理由に外出できなかった女性たちが積極的に社会に進出するという意味でも、工場の存在意義は大きい。
産後女性のヘルスケアに取り組んでいるマドレボニータ、カタリバも企業と様々な連携をしており、企業の本業での協力抜きには、NPO の活躍は考えられない時代に入っている。
こう見てみると、企業つまり営利組織と、非営利組織の垣根はますます低くなってきている。NPO は事業化し、企業は社会化している。社会性を持つ企業というのは新しいようだが、実はソニーもパナソニックもトヨタも創業当初はそうだったのではないか。それがいつの間にか、ということであれば、企業はもう一度原点に帰るいい機会といえる。それにはCSR 部門をもっと大事にすることだ。社会を変える企業こそいい企業なのだから。
(この記事は、株式会社が2014年5月7日に発行した「CSRmonthly 第20 号」から転載しました)