また、タヌキやハクビシンも23区全域で目撃されるようになり、新聞、テレビなど各種媒体でとりあげられた。特にハクビシンの増加は急激で、同じ頃、私自身も板橋区内の自宅マンションで、隣地との境界ブロック塀の上を移動するハクビシンを目撃している。管理会社によると、池袋近辺でも住民から、ハクビシン駆除の要望を受けることがあるという。
ハクビシンは、1994年に狩猟鳥獣に指定され、有害鳥獣駆除と合わせた捕獲頭数は、その年約1000頭だったが、2004年には約2000頭あまり、最近は年に約1万頭と集計・推計されている。
カワセミやハクビシンの進出は、東京という一つの大都市生態系の中での事象の部分的側面と捉えられる。しかし、同じように23区に分布を広げた野生生物ではあるが、カワセミの出現は、自然再生を象徴する明るいニュースと受け止められたのに対し、ハクビシンの都心での定着については、当時は、自然界の変調の兆しのように危惧した人も多かった。(現在では、空き家の増加など人間社会の変化も大きな原因と推測されている。)
都心で生きる野生の生きものの増加が、様々な受け止め方で話題となるなかで、静かに報じられたニホンカワウソの絶滅。表面的には、大都市を含め身近な自然が豊かになったように見える中でも、生物多様性の劣化に歯止めがかかっていないことへの警鐘のように感じた。
1979年、高知県須崎市で撮影されたのを最後に生存の物的証拠が絶えているニホンカワウソ。絶滅種と認定された後も、隣接する愛媛県南西部では、未確認ながら散発的な目撃情報があるという。宇和海に面したこの地域は、リアス式海岸がつらなり、人の近づけない区域も多い。私自身含め、少なからぬファンが、再発見に、なおも、一縷の望みをつなぐ理由だ。県もチラシを作成し、情報の提供を呼びかけている。
獺祭書屋の主、正岡子規の故郷でもある愛媛県。この地からの朗報を、宇和海の「海の幸」を広げ、「獺祭」を注いで祝う、そんな日が是非来てほしいものだ。
カルピス㈱人事・総務部 坂本 優
(バルディーズ研究会通信156号などから抜粋加筆)