「山ガール」がけん引、長野県の人と自然の共生[笹谷 秀光]

■  オトメ語り

「オトメ☆コーポレーション」は、これを彼女たちの目線でわかりやすく紹介していました。まず、「霧ヶ峰八島ヶ原湿原」でのガイドウォーク。日本には、四季折々の季節感や色彩感などが育んできた固有の文化があります。筆者は、「霧ヶ峰の高原と風」が環境省「かおり風景百選」に選定されている点を発言しました。

次に、ジビエ(野獣料理)の体験です。中山間地域の過疎化で人がいなくなった山では、イノシシやシカやクマが闊歩し、この20年間で、鳥獣被害は様相を大きく変化させました。一方、人間社会は、鳥獣被害防止のための銃、網、わな許可などの狩猟免許者が激減しています。深刻な過疎化と地域社会の崩壊の象徴的なできごとです。

次のオトメの挑戦は、林業体験と長野県産の木をふんだんに使った、しなの鉄道の「ろくもん」電車(軽井沢-長野間)の試乗体験です。信州の木のぬくもりを感じ、信州の自然(景観)・文化・食さらにはおもてなしを堪能できる大人気電車です。そのあと、長野市にある県産材モデル住宅および信濃町での伐採作業の見学と盛りだくさんの体験です。

最後は、上高地トレッキンングで自然保護を学び、これまでのミッションを振り返る女子会でした。上高地は、日本を代表する景勝地で国立公園に指定され、「特別名勝」と「特別天然記念物」にも指定されている日本の貴重な財産です。

このように、森林は、木材の生産のみならず、治山治水、水源涵養、景観の保持、森林浴による心の癒しなど「多面的機能」を有する重要な「自然資源」です。これを筆者の関東森林管理局長時代の見聞を交えて説明しました。

■  オトメのプログラムの物語性と発信力

フォーラムのようす(左から知事、寺島氏、筆者、フィノキアーロ氏)
フォーラムのようす(左から知事、寺島氏、筆者、フィノキアーロ氏)

「オトメ☆コーポレーション」がすぐれた資質を発揮して成長していることに加え、長野県庁には、その能力を引き出す、すぐれた企画マンがいるのです。生物多様性の本質を、長野県の自然資源の要所を押さえて、オトメがこなせるプログラムに組み、かつ、すべて、その道の専門家の指導を仰いでいます。この活動成果を長野県魅力発信ブログで発信しています。

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笹谷 秀光(CSR/SDGsコンサルタント)

東京大学法学部卒。1977年農林省入省。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て、2008年退官。同年~2019年4月伊藤園で、取締役、常務執行役員等を歴任。2020年4月より現職。著書『CSR新時代の競争戦略』日本評論社・2013年)、『協創力が稼ぐ時代』(ウィズワークス社・2015年)。『 経営に生かすSDGs講座』(環境新聞社・2018年)、『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社・2019年)。 笹谷秀光公式サイトー発信型三方よし 執筆記事一覧 

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