中小企業が主体となり、自然エネルギー活用や省エネで地域経済の活性化を目指す「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」(エネ経ネット、鈴木悌介代表)が30日、都内で年次大会を開いた。今年度はスローガンに「新しい現実をつくる実践のネットワーク」を掲げ、地域でのエネルギー自給、および効率的なエネルギー利用を進める。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■補助金も活用で省エネ支援
大会で鈴木代表は、日本商工会議所(日商)がFIT(自然エネルギーの固定価格買取制度)の見直しや原発の早期再稼働を求めていることに言及。「日商はエネルギーに関する要望のとりまとめ過程で、説明会や会員企業からの聞き取りを行ったという。私も地元の商工会議所の会頭だが、日商からの問い合わせは一切なかった。そのことに忸怩(じくじ)とした思いがある」と話した。
その上で「地域に根ざした中小企業の声を(エネルギー政策に)反映させる力を持ちたい。我々は会社という現場で小さくても実践し、横展開したい」と意気込んだ。
エネ経ネットは、専門家が中小企業の省エネを支援する事業「エネルギーなんでも相談所」を実施。提携する「エネルギー管理支援サービス事業者」のリミックスポイント(東京・目黒)は国の補助制度も活用して省エネ提案を行う。
同社の高田真吾代表は大会で講演。「エネルギー削減の阻害要因や解決策、省エネ目標をはっきりさせる。その上で省エネ戦略を立てることにより、継続的にエネルギー消費効率を改善できる」とアピールした。
今年度は、経産省が企業の省エネ対策を後押しする「エネルギー使用合理化等事業者支援補助金」で410億円を計上。EMS(エネルギー管理システム)を導入した省エネ対策に対して費用の半額まで補助し、6月にも公募開始見込みだ。
高田氏は「国の補助制度を利用すれば、省エネ対策費用をより短い期間で回収できる。また補助制度を使わない省エネ対策でも、短期間で費用を回収できる場合がある」と話した。
■地域への還元利益を試算
立命館大学のラウパッハ・スミヤ・ヨーク教授は、「再生可能エネルギーの地域経済効果」をテーマに講演した。
ヨーク教授は、エネルギーの地産地消によって地域が手にできる利益を「地域経済付加価値」と定義。地域経済付加価値は従業員の可処分所得、事業者の税引き後利益、地方税収からなる。ヨーク教授は「ドイツでは自然エネルギー設備の6割以上を地域が投資している。自然エネルギーは地域が出資し利用することで地域に多くの利益が残る」と述べた。
またヨーク教授は日本でのFIT導入後の地域経済効果の試算結果を提示。「2014年までの2年間で5.6兆円の投資があった。投資段階で8400億円が地域に落ち、償却後に地域が手にする付加価値は20年間で4.9兆円に達する」と話した。