[CSR]企業は「LGBT」にどう対応すべきか――日本財団でセミナー[CSR48・渡辺 千尋]

LGBTの割合について公的統計はないものの、全体の約5%と言われている。確率上は20人の職場に1人存在していることになる。自分の周りにはいないと思うかもしれないが、LGBTかどうかは見た目や仕草、言葉づかいでは分からない。そこには、当事者が職場でカミングアウトできない背景がある。

LGBTを取り巻く差別的環境を取り除くために、まずは知識の共有と正しい理解が必要だ
LGBTを取り巻く差別的環境を取り除くために、まずは知識の共有と正しい理解が必要だ

LGBTは、無意識の差別的言動や相談者の不在による孤立など、周囲が気付かないうちに本人を傷つけている可能性がある。差別的言動をする同僚や上司を避けるうちにコミュニケーション不足となり、職場いじめや昇進差別に遭ったケースもある。

こうした問題に対し村木氏は、企業ができることとして「LGBTに対する考え方を成文化し、支援体制を作ること」を挙げた。

1)人事担当者や産業医などがLGBTについて正しい理解を持つ 2)相談できる窓口をつくり、社内に掲示する 3)差別禁止規定への盛り込みや福利厚生を見直す――。こうした企業の姿勢を明文化することで、当事者は安心し、自分を理解してくれる職場で頑張ろうという勤労意欲が高まるという。

LGBTを施策に盛り込んだところ、「ダイバーシティ」という言葉の受け止め方が変わり、社内の雰囲気が良くなったという企業の例もある。

企業のグローバル化が進む中、世界では同性愛が死刑や禁固刑にあたる国も存在する。社員の海外赴任において配慮すべき人材がいることを知っているかどうかは、企業と社員のリスク管理という面においても非常に重要であろう。

ケーススタディでは、CSR48が寸劇「同僚へのカミングアウト」「職場の差別的な発言」を披露し、どう対応すべきかを考えた。特に差別的言動について、村木氏は次のようにアドバイスした。

「当事者は、傷ついていても口に出せません。管理者が差別的発言を許すことは、LGBT従業員の信頼をなくすことに繋がります。そうした言動に同調せず、毅然とした態度を取ってください」とアドバイスした。

参加者からは「LGBTが身近な問題として感じられるようになった」という意見のほか、「偏見先入観を持っていた自分に気が付いた。偏見に気付くには、正しい理解のインプットが必要」という意見が聞かれた。

「自分らしく生きられないことは、人生の大きなプレッシャーです。」村木氏の言葉が重く響いた。LGBTが抱える問題は私たちに「自分らしく生きるとは、自分の能力を発揮していきいきと毎日を送るとはどういうことか」という問いを投げ掛けた。

「CSR48」は、企業のCSR担当者を中心に「CSRに関心のある女子たち」が集まったグループ。「CSRをもっと身近に」をミッションに、勉強会やイベントを実施する。⽬指すのはサステナブルな社会と、女性のエンパワーメントによって、利害や⽴場を超えて、より良い社会に向けたアクションをおこすこと。メンバーの所属は、商社、メーカー、ゼネコン、NPO法人などさまざま。 雑誌オルタナの連載の他、イベント登壇や4月はじまりのSDGsカレンダー発売など多彩に活動を広げる。オフィシャルブログ 執筆記事一覧

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