「お情け」からいかに脱却するか[田中 勇一]

田中勇一
社会起業大学学長・リソウル株式会社代表取締役
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■「必要なモノ」に昇華する

エチオピアの高級羊皮を使ったレザーブランドandu amet(アンドゥ・アメット)の販売する高級レザー製品は、デザイン性に優れ、質感も良く、思わず手に取りたくなる品物ばかりです。代表の鮫島弘子さんは、青年海外協力隊員として、エチオピアやガーナなどでファッションに関するプロジェクトに携わってきました。そこで、貧しい現実の中に秘められた大きな可能性に気付き、彼らが作ったものを世界中に発信したいと思うようになったのです。

しかし、鮫島さんは、帰国後、まずは外資系ラグジュアリーブランドのマーケティング部に入社し、ブランドづくりを徹底的に学びました。売れる製品づくりを学んだ上で事業を始めたことが、アンドゥ・アメットの成功要因の一つになっていると思います。

社会起業大学の卒業生が中心で立ち上げた被災地支援団体NPO法人ラブギャザリングが、毎年3月に出す「わかめしゃぶしゃぶセット」は、1カ月で300セット以上売れています。わかめをお湯につけるとエメラルドグリーン色に変わる様が印象的なのと、味も良いことが売れる理由であり、被災地支援という理由だけではここまで売れないと思います。

社会貢献活動をしていると、どうしても誰かを救うことに意識を集中してしまい、自分たちが提供しているモノやサービスの質にまで意識がいかないことが多々あります。社会貢献活動を事業化していくためには、提供するモノやサービスを、本当に必要とされるモノに昇華させていく努力が欠かせません。途上国の人がかわいそうだからとか、被災者がかわいそうだからという「お情け」の部分に頼ってばかりいては、事業化への道はほど遠くなります。

逆に質が伴ってくれば、ミネラルウォーターのボルヴィックの「1L for 10L」のように、社会貢献活動が付加価値となって売り上げが上がることもあります。「お情け」から脱却し、提供するモノやサービスの質を地道に向上していくことが、遠いようでもっとも近い事業化への道となります。

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田中勇一
社会起業大学学長・リソウル株式会社代表取締役
京都大学理学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行。米国カーネギーメロン大学にて MBA 取得後、銀行でのALM業務に従事。その後、起業支援等を経て、新銀行東京設立プロジェクトに草創期より参画し、人事部門責任者として銀行立ち上げに大きく貢献。現在は、リソウル㈱を設立し、経営支援、転職支援等に取り組む。2010年4月社会起業家育成に特化したビジネススクール「社会起業大学」設立。2013年4月多摩大学大学院客員教授に就任。

2015年7月15日(水)10:09

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