日本弁護士連合会による人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス

■本ガイダンスのポイントと活用方法
本ガイダンスは下記の5つの章で構成されています。

第1章 指導原則の採択と企業の人権尊重の必要性:指導原則が採択された意義の解説、企業が人権尊重の取り組みを行う必要性・重要性の説明がなされています。

第2章 企業の人権尊重責任と法令遵守:企業が尊重すべき人権基準や人権課題の抽出・影響評価にあたっての考え方など、人権尊重責任を法令遵守の問題として扱うための具体的方法について解説がなされています。

第3章 人権デュー・ディリジェンスへの実践的助言:人権課題を事業活動に組み入れるため、実施のステップや推進上のポイントが具体的事例やQ&Aを含めて示されています。

第4章 企業の人権尊重責任の実践例:企業の人権尊重責任の実践例として、サプライチェーンに関する取り組み事例や、女性のエンパワーメント原則および子どもの権利とビジネス原則に関する実践例が紹介されています。

第5章 サプライヤー契約におけるCSR条項の導入:人権侵害を引き起こした取引先企業に対する是正措置要求として、また発注企業とサプライヤー双方の共同の取り組みとして機能するようなCSR条項の導入について解説されています。

国際社会では近年、「法による支配」の限界を踏まえ「契約による支配」すなわち取引関係における影響力の行使を通じて人権擁護や社会正義を実現していくことが期待されている、と齊藤弁護士および高橋弁護士から指摘がなされました。

サプライチェーンにおける人権・CSRリスクが高まっている現状では、発注企業とサプライヤー双方が情報交換・意見交換を十分に行い、サプライヤーCSR条項の導入において可能な限りサプライヤーの理解や納得を得ることが重要とされます。

人権侵害が起きた場合には、企業は取引先企業に対してその影響力を最大限行使し是正措置を図るべきであり、人権侵害の放置につながりかねない取引解消は最終手段と位置づけられるべきとされています。本ガイダンスの第5章に示されているCSR条項モデル条項はあくまで参考例とし、各企業・弁護士が個別の状況に応じてCSR条項の内容・運用を検討していくことが重要であると指摘されました。

本ガイダンスを活用して人権デュー・ディリジェンスを実践することにより、自社の内部統制の確立のみならず、人権に配慮した活動を行っているかどうか取引先を評価し適切な事業活動に誘導することが可能となります。

日弁連CSR PTは今後、日本企業や弁護士の「ビジネスと人権」に対する取り組みの発展に資するよう、セミナーやフォーラムの開催を予定しています。JFBSが9月に開催する国際ジョイント・カンファレンス「企業家精神とサステナブル・イノベーション」(9月10~11日、於早稲田大学)においても、「ビジネスと人権」をテーマとした企画セッションを開催します。ご関心のある方々のご参加をお待ちしております。

国際ジョイント・カンファレンスに関する詳細は下記URLを参照ください。
http://j-fbs.jp/annualconf_2015.html

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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