■ビジネスにおける子ども虐待
従来、子どもの安全管理といえば、けがや事故、おもちゃや日用品の誤用、食の安全やアレルギー、火事や自然災害などの対策を指すことが多く、様々な企業努力によって製品の安全性改良も重ねられてきた。
ひとたび企業活動を通じて消費者に害を与えるようなことがあっては、社会からの信用を損なうことは避けらないと、経営側も予防に神経をとがらせてきたはずである。しかしそのような中にあっても、ほとんど効果的な対策もなく見過ごされがちであったのが、ビジネスにおける子どもの虐待と搾取である。
体罰や、侮辱、差別的な扱いなどで子どもを支配するやり方は、特に子どもと直接、密接に関わる教育や保育、スポーツ等の分野でこれまで繰り返されてきた。加えて、子どもを守り保護する立場にある職業人が、その立場を利用して子どもへのわいせつ行為、盗撮、子どもポルノなどの性的搾取に関わるなど、体罰や暴言で子どもを虐待するといったことまで起きてきた。
また昨今の通信産業の発展の陰で、携帯やSNSなどを通じて子どもたちが犯罪や被害に巻き込まれる数は年々増えている。ここで注目すべきなのは、そういった加害行為の多くが子どものための施設やサービスの場で、子どものための仕事に関わる身近な大人が関わっているという事実である。
こういった被害は表面化しにくい性質があり、身近な問題として捉えたり再発予防に結び付けたりすることが難しい。果たしてこのような問題行為が日本でどのくらい発覚しているかを知る手がかりとして、ビジネス関連のデータではないが、文科省の公表内容 を参照してみよう。
わいせつ行為等で懲戒処分等を受けた教職員は2013年度には全国で205名、被害者の約半数は自校の児童生徒や卒業生である。体罰による懲戒処分は3953名、被害を受けた子どもの数は8880人に上る。
言うまでもなくこれは氷山の一角であり、水面下でその何倍の子どもたちが痛みや屈辱に耐えているのか推し量ることもできない。ひとたび被害にあってしまった子どもには生涯にわたって癒しがたい傷を残し、インターネット上に流布された映像はたとえサイトから削除したとしても完全に世界から消滅することは困難となる。
これらのできごとが子どもや家族にもたらす深刻さを考えるなら、組織にはこれを未然に防ぐ責任があるのではないだろうか。特に子どもと日々接してその成長に関わる企業においては、喫緊の課題である。
■行動規範はリスク削減への第一歩