ホワイトタイガーと白いスッポン――私たちに身近な生物多様性(13)[坂本 優]

同じように体が白くなるものとして、アルビノが知られる。アルビノは、遺伝的にメラニンが生成できず結果として白く見える。生命のメカニズムのなかで起こっていることであり個体の優劣を示すものではない。しかし、アルビノの場合、メラニンの欠損による視力の低下や、白色自体が周辺環境の中で目立ちがちなこと等から、自然界での生存競争のうえでは不利な面が多いと考えられる。

同じ流域の岸辺と水中(画面右)に2匹の普通の体色のスッポンがいる。こちらのスッポンは少し離れると体色が周囲の色合いに溶け込み目立たなくなる
同じ流域の岸辺と水中(画面右)に2匹の普通の体色のスッポンがいる。こちらのスッポンは少し離れると体色が周囲の色合いに溶け込み目立たなくなる

古来、人々は世界中で、通常とは異なって白い、これらの個体を崇めあるいは恐れ、崇拝の対象として珍重してきた。我が国でも、白馬を神馬とし、白猪や白鹿が神の使いや化身とされた事例や伝承がある。歴史的にも有名な出来事としては、白い雉が献上されたことを瑞祥として、元号を大化から白雉と改元した例が知られている。

人々は、時に白変種やアルビノを入手した場合、少なからぬケースでこれらを保護し、また、ホワイトタイガーに見られるように、近い遺伝子を持った個体同士を人為的に掛け合わせ、これらを増やすことも試みてきた。

動物園には、動物の展示のほか、生物多様性保全のために絶滅危惧種を保護、繁殖させる、という役割も期待されている。

トラを含め、繁殖に際しては、近親交配を防ぐために、遺伝的に遠い個体を掛け合わせるなどの努力もなされている。今年(2015年)2月、デンマークのコペンハーゲン動物園で、近親交配による弊害を防止するため、若い健康な雄のキリンが殺処分された。

このニュースは、解体を来園者に公開し、研究用に残す以外の部分を肉食獣の餌に再利用した、などの事実とともに広く報道された。多くの方が、様々な思いとともに記憶しておられることだろう。

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坂本 優(生きものコラムニスト/環境NGO代表)

1953年生。東京大学卒業後、味の素株式会社入社。法務・総務業務を中心に担当。カルピス株式会社(現アサヒ飲料株式会社)出向、転籍を経て、同社のアサヒグループ入り以降、同グループ各社で、法務・コンプライアンス業務等を担当。2018年12月65歳をもって退職。大学時代「動物の科学研究会」に参加。味の素在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設する等、生きものを通した環境問題にも通じる。(2011年以降、バルディーズ研究会議長。趣味ラグビー シニアラグビーチーム「不惑倶楽部」の黄色パンツ (数え歳70代チーム)にて現役続行中)

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