欧州発の循環経済を推進する「エレン・マッカーサー財団」 ――下田屋毅の欧州CSR最前線(45)

活動は、企業のエグゼクティブへの研修の実施や、1年に2回CE100メンバーを対象に2日間のワークショップを開催、サーキュラー・エコノミーの推進を披露する場の提供を行っている。現在10ものワーキンググループがあり、産業・分野を横断的にカバーし推進することを可能にしている。

また、「CE100 Summit」という年1回1日のイベントを例年6月に開催(2015年は6月23日にロンドンで開催)。専門家・実務担当者が、この1年間のサーキュラー・エコノミーのトレンドや活動について実践的な内容を提供し、イベントはメンバー間のネットワーキングとしても機能し企業間の多くの協働を生みだしているという。

2.分析(転換のメリットの強固な証拠)
同財団は、ナレッジパートナーであるマッキンゼー·アンド·カンパニーと協働し、サーキュラー・モデルの経済的潜在力を定量化し、この価値を捉えるアプローチを開発し、「経済レポート」をシリーズで作成している。これはサーキュラー・エコノミーへの移行を加速するための論理的根拠を記載したものだ。

例えば、サーキュラー・エコノミーの実践により製造業の原材料に関するコスト削減が2025年までに6千3百億ドル実現、消費材の材料費削減価値として7千億ドル、またサーキュラー・エコノミーをサプライチェーン全体へスケールアップを加速させると、2025年まで毎年1兆ドルを生み出し、今後5年間で10万の新しい雇用を産み出すとしている。同財団は、主要なサーキュラー・エコノミーの国際的な専門家のネットワークとともに活動しその理解を拡大していくことを行っている。

3.教育(世代を鼓舞し、将来を再考する)
同財団は、大学との協働を実施、パイオニア大学(英・蘭から4校)、ネットワーク大学(英・米・仏・伊・印・メキシコ・中国から12校)と協働し、大学院のプログラムでサーキュラー・エコノミーを先進的に教えるとともに、その大学内で実践も行っている。

また米国シュミット・ファミリー財団(前米グーグルCEOシュミット・エリックが創設)との協働で、「シュミットーエレン・マッカーサー・フェローシップ・プログラム」を実施している。

これは提携大学の教授等とともにサーキュラー・エコノミーについてのプロジェクトを実施し、学生が中心となりサーキュラー・エコノミーに関する開発及びそのプロジェクトの実践をそれぞれの大学内で実施。年1回6月に英ロンドンで1週間のサマースクールを行い、議論を交わしている。今後は、国際バカロレアとの協働も視野に世界の他の国々への教育を効果的に行うことを考えている。

エレン・マッカーサー財団では、2015年4月に企業の取り組みに関する情報を提供する「CIRCULATE」(http://circulatenews.org/)を始動。そしてさらに2015年5月には、サーキュラー・エコノミーの実践度を測定するツールを公表するなど、活動を加速させている。

■日本との連携にも関心

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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