【オルタナ42号】人を大切にして500年、現代に生きる「掟書」――虎屋黒川光博社長インタビュー

■売り上げ至上ではない

─自動車や電機メーカーでさえ100年足らずです。何が違うのでしょうか。

振り返ってみると、やはり人を大切にしてきたと思います。もちろん、売り上げが上がらなくていいという話ではありません。しかし、売り上げ至上主義ではない。企業は人で成り立っています。人を大切にすることが基本です。

─「人を大切にする」という考えは、先代から引き継がれているのでしょうか。

私自身も強い思いはありますが、少なくとも私が直接知っている祖父や父の時代も大切にしていたように思います。私は1966年に富士銀行に入社し、3年ほど働きました。その後、1969年に虎屋に入社、副社長として約20年間働きました。そのうち後半の約10年間は経営の大部分を任され、1991年に社長に就任しました。

ある時、人事異動において若い人材を思い切って登用したことを、自慢げに祖父に報告すると「古い人も大切に」という言葉が返ってきました。とても印象的で、今でもその情景をしっかりと覚えています。

父からも、「いまでこそ銀行からお金を貸してもらえるようになったけれど、昔はそうではなかった。終戦間もない頃には、給与の遅延を従業員に詫びたこともあった」と聞いています。

私は座学で「こうあるべき」という経営論を学んできましたが、すべてのことが理論どおりに動くわけではありません。ほかの経営者と交流するなかで学ぶことも多くありました。

─あるインタビューで、変えていいものは「味」、変えていけないものは「お客様に対する感謝の気持ち」だと答えられていました。「お客様」への「感謝」を優先することで、従業員が疲弊してしまうことはないのでしょうか。

「お客様を大切にすること」は、いつの時代も変わりません。ただ、やはり社会環境が大きく変わっていくなかで、変化していることもあります。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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