これからの企業とNGOのパートナーシップ――ビジネスと子どもの人権(6)[森本 美紀]

■日本の子どもの死因第1位は不慮の事故
: 日本は、新生児死亡率は世界で最も低い国の一つですが、5歳以下の子どもの傷害による死亡はOECD加盟国のなかで下から4番目と高く、また多くの国が減少傾向にあるなか日本は微増しています※1

実際に、日本では1~4歳の子どもの死因第一位は不慮の事故であり、その多くは家庭内で発生し、溺水や窒息での死亡が多いのです※2。近年の救急救命術や医療の進歩により、一命を取りとめたものの高度後遺障害を抱える子どもが多数存在することは容易に推測できますし、事故は、子どもの重大で深刻な健康問題の一つなのです。

不慮の事故と名付けられていますが、その内実は風呂場での溺水や日用品等の誤飲による窒息であり、製品がその死に大きく介在しています。例えば、2013年度の厚生労働省『家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告』によると、小児の誤飲事故の原因は、医薬品・医薬部外品が96件で18.1%、たばこが94件で17.7%、プラスチック製品が60件で11.3%となっていて、玩具、金属製品、硬貨、電池、食品類、化粧品、洗剤類と続いています。どの家庭にもある身近なものが事故を招き、死に到ってしまうことがあるのです。

■子どもの事故予防へのアプローチ
森本: そんな危ないものを子どもの手の届くところに置いた親が悪い、たばこや電池をいたずらした子どもが悪い、という意見についてはどうお考えですか?

: 子どもの年齢に合わせて適切に見守り養育するというのは親の義務ではありますが、365日24時間ひと時も子どもから目を離さずにいることは難しく、どんなに対策を講じても事故をゼロにすることは不可能であり、絶対安全はありません。その考えのもと、事故によって起きる傷害の程度を軽減させる傷害予防・傷害制御の考え方や手法が事故予防には必要だとWHOは推奨しています。

例えば、ライターを使った子どもの火遊びによる火災件数は毎年一定数発生し、繰り返し注意を呼びかけてきたものの一向に減りませんでした。そこで2010年に使い捨てライターに関する法規制が開始され、翌2011年からは幼児の誤使用を防ぐチャイルドレジスタンス機能を備えないライター等は販売出来なくなりました。法規制ならびに製品改善後のライターが発火源になる火災件数は、東京都内においては明らかに減少し、かつ5歳以下の子どもによるものは激減していることが2014年に発表されました。

※1 World Health Statistics 2014, WHO
※2 厚生労働省「平成25年人口動態調査」

■事故事例が法規制や規格を動かす

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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