木と木を組み合わせ、人と人をつなげる木造建築家

住民にとっては図書館カフェとしても利用できるので、一人でも気軽に訪れることができる。また、滑車は農業倉庫として使われていたときからあったものを残した。滑車があることで、この建物が昔は農業倉庫だったということを新旧の住民に伝え続ける。

川の上・百俵館
川の上・百俵館

この建物を設計したのは、木造建築家・鳥羽真さん(36)。鳥羽さんは、苦節10年の苦労人だ。この建物がグッドデザイン賞を受賞したことで、「やっと建築家として一歩踏み出せた」と話す。

鳥羽さんが木造建築を本格的に学んだのは28歳のとき。愛知学院大学を卒業後、金属部品ベンダー勤務を経て28歳で、岐阜県立森林文化アカデミー木造建築スタジオに入学した。鳥羽さんの母親が着物デザイナーだったことで、子どもの頃からデザインに興味はあったという。

岐阜県立森林文化アカデミーには2年通ったが、山の中にあるため、森林の健康状態を肌で感じ取るようになる。開発が進むたびに、山は荒廃していくし、人工林は人が間引かないと大雨で土砂くずれを起こしてしまう。

鳥羽さんがプロデュースした46ドウフケンで登壇した、渡辺果樹園の渡辺康弘氏
鳥羽さんがプロデュースした46ドウフケンで登壇した、渡辺果樹園の渡辺康弘氏

古来から日本人は木を守り続けてきた。鳥羽さんも建築の知識を、木を守るために使いたいという思いが強くなり、岐阜県立森林文化アカデミーを卒業後、さらなる学習を積むため、京都大学院生存圏研究所に行き、木質構造機能分野の世界に没頭した。

その研究室で2年学び、京都の設計事務所と東京のコンサルティング会社を経て、33歳で独立した。コンサルティング会時代社から日本橋と縁ができ、地方の農作物を日本橋のワーカーに販売したり農園開発などの新規事業を担当した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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