企業不祥事をCSRレポートから読み解く

企業のCSRの根本を問われる不祥事が次々と明るみに出ています。これらの不祥事はなぜかブームのように頻発した後、いったん沈静化しますが、また数年ほどすると再発するということを繰り返しています。残念なことに、最近の事例は企業トップが絡んだ巨大な不正も多く、以前に比べ悪質になっている感すらあります。今回、おそらく現場で不正が常態化していたと思われるケースとして三井住友建設にフォーカスし、当該企業のCSRレポートから何が読み解けるかを考えてみたいと思います。(町井 則雄=日本財団)

親会社である三井不動産グループのCSRレポートでは業態が多様化し過ぎてしまうため、同じ東証一部上場企業の三井住友建設のレポートを見ることにしました。この不祥事の背景が、業界全体の構造にあることはマスコミが指摘するとおりでしょう。

とすれば、CSRレポートで最も注目すべきはサプライチェーンマネジメントということになります。
ところが、三井住友建設のCSRレポートでは、このサプライチェーンとそのマネジメントに関してどのように取り組んでいるのかの記載がありません。

つまり、これだけ複雑な業界構造があり、最も脆弱性となり得る重要事項について何も触れられていないのです。ESGを含めた対応表などの記載もありますので、少なくとも世界的なCSRレポートのガイドラインについて理解も意識もしていないということではなさそうです。

これらを意図的に外したかどうかはさておき、コンプライアンスに関する重要事項の記載もあり、第三者意見も受けているのにも関わらず、記載していなかいということ自体がリスクの一つと言わざるを得ません。一方、トヨタ自動車のCSRレポートを見てみるとその差は歴然です。何が自分たちのビジネスにとってリスクなのか、それをどのように排除するためにどのような形で取り組もうとしているのかなどをきちんと説明しています。

つまり、大企業ほど長大であるはずのサプライチェーンにおいて、そのマネジメントに対する取り組みの情報開示量が少ないこと自体にリスクを孕んでいるということを私たちは考慮しなければならないようです。

逆にこれらについて詳細に報告したCSRレポートを出している企業は、社会を裏切らない可能性が高いとも読み取れます。CSRレポートは、その時、その時代において何を記載すべきかが変化します。サプライチェーンとそのマネジメントは今後、建築業界だけでなく、グローバル化が進めば進むほどリスクを内包し得る部分です。

この領域のCSR情報は今後、レポートの中でも特に注意して読み解いていく必要があり、レポートを作る側もこれを意識することが求められていくでしょう。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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