ダムでは地域を守れない――建築規制やまち作りで減災する「流域治水」でシンポ

講演で嘉田さんは、流域治水が「命を守る」ために重要だという財政事情も明らかにした。「滋賀県の一般会計予算は5000億円ですが、政策経費で使えるのは約200億円。そのうち60億円を使ったとしても、10年に1度の洪水に対応する河川整備に、あと100年かかります」。それを正直に伝え、「リスクを見える化することは、県にとっては権限であり義務でもある」と言うのである。

一方、朝堀室長は、国交省が従来は100年に一回、200年に一回の洪水規模を「そこまでは守りますよと言ってきた」が、それを越えると「何も対応していないのが基本的な姿勢だった」と反省の弁を語った。

そして、1月に「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」、8月に「水災害分野における気候変動適応策のあり方について」が答申され、5月には水防法の一部改正により「想定し得る最大規模洪水」の区域を自治体が公表すると説明した。11月には鬼怒川水害を受けて「大規模氾濫に対する減災のための治水対策のあり方について答申(案)」が審議であるとして、中身を説明した。

答申案は、「想定洪水」を前提にダムを作る河川整備の計画の考え方はそのまま変わらず、「それ以上の氾濫が発生した場合の減災も考慮した見直し」(朝堀室長)であることが明らかになった。

会場からは鬼怒川堤防は「下流から整備した」との朝堀室長の説明を疑問視する質問が出た。実際は上流に4ダムが完成する一方、決壊地点(下流)の整備が遅れ、事実と食い違っていたからだ。

鬼怒川に限らず、全国の川で未整備区間が残り、高度経済成長期にできたダムなどの老朽化が進む中、何に税金投入を優先するかの判断には、真の住民参加が必要だ。滋賀県が進める「流域治水」こそが人々の意識を変え、命を守る真の治水を実現するのではないか。(ジャーナリスト・まさのあつこ)

※こちらの記事はダイジェスト版です。フルバージョンは下記URLからご覧になれます。
◆嘉田前知事「立場を越えて出口を探す」治水シンポジウム
 http://bylines.news.yahoo.co.jp/masanoatsuko/20151210-00052307/ (前半)
 http://bylines.news.yahoo.co.jp/masanoatsuko/20151211-00052355/ (後半)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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