スリランカの貧困層、オンライン教材で学力が向上

■女性の自立支援にも貢献
スリランカでは、はじめにeラーニングによる算数塾「Surala Juku」2校を開校し、定員の40%を上回る希望者がいたという。そこで、9月に2校を追加で開校したところ、即日220人を超える入塾申込みがあった。現在は4校で、300人以上の子どもたちが学んでいる。

スリランカの平均月収は約2万円。Surala Jukuの月謝は500スリランカルピー(約390円)で、負担の少ない価格に設定されている。すららネットはスリランカで、2017年末までに100教室、生徒数1万人を目標としている。

すららネットの湯野川孝彦社長
すららネットの湯野川孝彦社長

湯野川社長は「コロンボでSurala Jukuに通っているほとんどの子どもたちは、学校に通いつつ基礎数学力を身に付けるためにSurala Jukuにも通ってくれている。しかし、アジア全体ではまだまだ多くの子どもたちが、貧困や距離などが理由で、公教育を受けられていない。教師の育成にはどうしても時間がかかるが、オンライン教材で教育の質を担保し、教師の教務力に依存しないやり方で全体の底上げをしていきたい」と話す。

実際にスリランカの学習塾では、ほとんど計算ができないGrade3(日本の小学2年生にあたる)の子どもたちが当初14%いたが、いまではゼロになり、成績も25.4%(Jukuで履修済みの足し算分野において)向上した。保護者からは、学力向上の成果だけでなく、挨拶や手洗いといった日本流の「しつけ」を学べる点も評価されているという。

さらに、湯野川社長は「オンライン教材のため利益率は高く、ファシリテーターは教務以外の塾の運営や子どものモチベーションに注力できるのもビジネス上の利点」と説明する。

すららのファシリテーターは、BOP 層の女性たちの自立支援にもつながっているという。学習塾の運営パートナーである女性銀行とファウンデーション・フォー・ヘルス・プロモーションの協力のもと、すららネット本部が研修を行い、教務経験の無いBOP 層の女性をファシリテーターとして育成している。現在、8人がファシリテーターとして、やりがいと誇りを持って活躍している。

2015年9月に国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)では、「すべての子どもたちへの教育機会の拡大」が掲げられている。さらなる先進国の貢献が求められるなか、同社のソーシャル・ビジネスに期待したい。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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