地方創生映画『クハナ!』が問う「価値」の意味

0912_1「価値」とは何か。人間は判断を理性的に行う生き物で、特に企業活動では「価値」はお金に換算できなくてはいけないと言う性があります。しかし、私が住む三重県桑名市のある映画づくりプロジェクトを通して、本当の価値とは何かというひとつのヒントを得られた気がします。その奇跡ともいえる挑戦をご紹介したいと思います。

前代未聞の映画づくり

それは桑名市を舞台に制作された、廃校寸前の小学校でジャズバンドを始めた生徒や、それを見守る大人たちの、笑いあり、涙ありのハートウォーミングな映画です。ストーリーの面白さや映画の完成度が高いことはYahoo!映画の新作評価ランキングで、総数は少ないながら1位をキープし続けたことからも折り紙つきですが、この映画の一番の特長は、その映画を作った桑名の町と監督、そしてその映画づくりが起こした奇跡の数々です。

そもそも、映画ができたきっかけは、夫の転勤で東京から桑名に移り住んできた一人の女性が、この町の魅力を伝えようと始めたブログでした。東京で知り合った『アンフェア』の脚本、『ドラゴン桜』の原作など数々のヒット作を手掛けた秦建日子氏が、そのブログを読んで「桑名で映画づくりも面白そうだな」と反応したところ、桑名の町を盛り上げたいと考えて集まっていた地元の有志の心に火をつけ、それに監督が応える形で現実化したのです。

従って当初の資金はゼロ成功の見込みがないどころか、大きなリスクを背負った出発でした。そんな状況でもこの挑戦に掻き立てたのは、「自分の作品が、視聴率とか出版部数とか興行成績というような数字だけでなく、一つの町に、社会に、様々な角度から貢献できるかもしれないという可能性」に、どうしようもない「やりがい」を感じたからとのことです。(引用『予想を超える化学反応。自分の街がもっともっと好きになる地方創生ムービー2.0というもの。』映画づくりの経緯はこちらに詳しく、かつ生き生きと描かれていますhttp://otonamie.jp/?p=22205

このように、この映画が実現した背景には、秦監督や、同じく立ち上げ時から音楽担当の立石氏などの新しい可能性への挑戦意欲と、桑名を愛する地元の有志(のちに「クハナ!」)映画部に発展)による地元愛の相乗効果があったのです。その「クハナ!」映画部の代表、林恵美子さんに、この映画創りとそこから生み出した価値について伺いました。

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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