世界は低成長時代へ――プラチナ社会目指せ

イノベーションなくして会社は持続できない時代

――人工物の飽和とはどういう意味でしょうか。

一人当たりの自動車保有台数は、各国とも「0.5台」で頭打ちになることが分かっています。自動車が飽和している国では、他の人工物も飽和します。鉄も、多くの先進国ではすでに鉄鉱石から作る必要はなく、スクラップからできる鉄で十分なのです。人工物の飽和は資源価格の下落や経済成長の鈍化など負の効果も大きいのですが、一方で、人類が循環型社会に向かうことの合理性を示しています。

――日本ではこの20年、過去にない低成長が続いていますが、今後も高度成長は見込めないということでしょうか。

経済を成長させるのは物欲です。戦後、国民みなが「カラーテレビ、クーラー、自動車」という三種の神器を「今は買えないけれど、いつか欲しい」と思ったから経済成長につながりました。しかし最後の自動車もすでに飽和しました。これからは「もっと質を求める社会」、すなわち「プラチナ社会」に転じていきますが、物欲ほどは直接的に経済を活性化させません。今後もすべての先進国で低成長になるのは当然です。

――プラチナ社会の必要条件の一つである「地球環境の持続性」について考えると、日本では、昨年の「パリ協定」や低炭素の重要性を理解していない企業経営者もまだ多いように見受けられます。

_MG_6961 - コピー自分ごととして考えられないのでしょうね。世界の大きな流れに認識が追い付いていない人が多いように思います。ただし、ある程度まで認識が高まれば、一気に広まるという希望は持っています。オリンピックのメダルを都市鉱山で作ろうという話なんかを聞くとそう思いますね。

――ご著書の巻末にトヨタ自動車の内山田竹志会長との会談が出ています。トヨタの雰囲気も変わってきましたね。かつてのトヨタはあまりバックキャスティング志向ではなかったと思います。

トヨタ環境チャレンジ2050には、もろ手を挙げて評価しています。車から車をつくる考えは、元々のビジョン2050に書いてある都市鉱山の発想ですね。省エネや再生エネルギーについてもです。あの世界最強の自動車会社がそれを宣言したのですがから、もろ手を挙げて応援して良いと思います。

――数年前までは、日本企業の経営者の多くはCO2削減について「乾いた雑巾を絞りつくした」と言い訳していました。今は、雑巾ではない別のものを絞る発想が必要です。そこにビジネスチャンスがあると思います。

イノベーションをやらないと会社が持続できない時代になりました。新しい本を書くために、自動車の消費エネルギーを調べました。1995年のデータでは、日本と欧米の車の燃費を比較すると、日本車の燃費が明確に20%は良かったです。ところがガソリン車に関しては、今年はもう追い付かれています。トヨタがエコの先端を走れるのは、イノベーションをやってきたからです。

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

執筆記事一覧
キーワード: #自然エネルギー

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..