女性たちよ、「フェミニズム第四の波」に乗れ

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1月27日から公開の映画「未来を花束にして」

1月27日から公開の映画「未来を花束にして」

100年前のロンドン。選挙権も親権もない時代に生きた女性たちがいた。参政権を得るために人生と命をかけて戦った女性たち「サフラジェット」を取り上げた、世界初の映画「未来を花束にして」が、1月27日から公開される。

当時、サフラジェットたちの精神的な支えとなった女性がいる。メリル・ストリープ演じる「エメリン・パンクハースト」、実在の人物である。パンクハースト夫人は、未亡人であり、母であり、そして社会活動家として、「婦人社会政治連合(WSPU)」を設立し、多くの著書や研究論文を残した。今回、映画公開にあたり、エメリン・パンクハースト夫人のひ孫で、社会科学博士のヘレン・パンクハースト氏が来日。本作品やフェミニズムに関する考えを聞いた。(取材・文=寺町 幸枝)

■最後にテロップに世界各国の情報を

――映画とのかかわりについて聞かせてください。

映画とのかかわりは、出来上がった台本を読んでほしいと言われたことがきっかけでした。私が映画の製作チームに進言した主な内容は、最後にテロップで流れる女性参政権獲得の「年月」に、世界の国々の情報を加えることでした。

当初の台本には、イギリス国内での女性参政権獲得日を入れる予定だったのですが、私はイギリスでの女性参政権獲得をきっかけに、世界の国々に派生していることがわかる方がより興味深いものになる、と進言したのです。特に2015年のサウジアラビアは必ず書くようにということを進言しました(※1)。

こうした情報を映画に加えることで、イギリスの作品ですが、世界のどこにいても同じ悩みや苦しみを感じている人がいた、ということを感じてもらえると思ったのです。そして、過去を取り扱った映画ではありますが、現在に繋がっていることも感じてもらえると思ったのです。

このやりとりがきっかけとなって、映画にもっと関わることになりました。そして、娘と一緒にカメオ出演を果たし、映画のプロモーションにも一役買うことにしたのです。イギリスのメディア関連のイベントを主催し、米国、オーストラリア、エチオピア、そして日本でのプロモーションを担っています。

※1
サウジアラビアは、2011年に前国王により女性参政権が承認され、2015年に初めて女性の選挙への立候補と投票が認められた


■価値を見出す人が増えない限り、状況は変わらない

来日したヘレン・パンクハースト博士

来日したヘレン・パンクハースト博士

――作品の中で主人公をサフラジェットの活動に誘った女性・ヴァイオレットが、最後は自分の妊娠をきっかけに、サフラジェットの活動から距離を置くことを決めました。このように、実際気持ちが揺れた女性たちはたくさんいたと思いますか。

映画の中で、主人公はずっと「自分がサフラジェットではない」と言っていましたよね。ヴァイトレットは、それに引き換え、非常に積極的な活動をし続けていたにもかかわらず、実際に自分が妊娠をした時に、家族の未来を考えて一旦身を引くことにしました。

また、少し階級の高いアリスは、彼女の活動を支援してくれていた夫から、活動を止められたことで声を潜めてしまいました。この映画で描かれている異なる階級、異なる人生のタイミングで、女性たちがサフラジェットとしてのかかわり方を変えていったという部分は、実際にあったと思います。

この考えや行動が少しずつ変わる、という部分においては、男性たちにも言えると思います。

例えば、モンドの夫であるサニーは、父親としての機能を全く果たせないにもかかわらず、自分の立場を悪くした妻に対して感情で優位に立とうと行動します。私は10年後のサニーやその息子が、女性の自立についてどう考えるかに非常に興味を持ちました。

全世界的にみても、十分な数の人が「男女は平等であるべき」と、その価値を認めない限り、状況は変わらないということです。

■力のある女性の監督、製作、脚本の登場で実現

――世界で初めて「サフラジェット」を描いた作品ということですが、どうしてこんなに時間がかかってしまったのでしょうか。もっと前にこのようなテーマは取り上げられても良かったのでは。

映画の世界は資金を出す人も、プロデューサーも、みんな男性ばかりです。脚本家たちも男性ばかりなのです。ですので、サフラジェットを題材にした映画ができるのに、時間がかかったのは仕方がないことだったように思います。

ようやく女性の監督、女性のプロデューサー、そして女性の重要な役者たちが集まってこのような映画を作れるようになったのです。この映画の資金集めも決して簡単ではありませんでした。業界全てが未だ男性社会ですから。しかし、ようやくここまで来たのです。

とても少数ですが、このような映画にかかわりたいという男性の役者も出てきました。実際、プロデューサーたちはたくさんの役者たちにこの映画の役をオファーし、断られたのです。理由は、自分の役が重要な役ではない、大きな役ではないという理由からです。女性は、多くの映画で、補佐的な役を引き受けないといけないのですけれどね。

ちなみにこの映画の中で、サフラジェットの一人、イーディス役のヘレナ・ボナム=カーターの出演についてはエピソードがあります。

彼女は、参政権運動が起きた時のイギリス首相で、活動家たちを罰していたハーバート・ヘンリー・アスキス伯爵のひ孫です。そのため、最初にこの役をオファーする際に、プロダクションチームは少し躊躇し、彼女の家族にとってあまり喜ばしい内容ではない作品への出演に興味があるかと聞いたそうです。

しかし、ヘレナは「私にぜひこの役をやらせてほしい」と名乗りを上げたのだそう。そして、首相の別荘に爆弾を仕掛けるシーンでは、実際自分の父親のズボンを履いて撮影に挑んだと言うのです。

彼女は「もし今の時代に父が生きていたら、違った考えを持っていたと思います。ただ彼は当時変わるのに時間がかかっただけなのです。世界が変わっているのに、いつまでもずっと同じ考え方では生きていけないのですから」と言っていたそうです。

■女性の投票行動に映画は影響するのか

――イギリスの投票率は昨今平均60%ほどで、1950年代に比べると30%も落ちています。女性の投票率そのものも、下がっているようですが、映画公開後、イギリスで何か話題になったりしたのでしょうか。

イギリスのネット調査によると、女性たちは昔に比べ、例えばソーシャルメディアを通じて、自分が「フェミニストである」と発言することに抵抗がなくなっている、と最近聞いたところです。ここでいうフェミニストというのは、政治的な活動をする女性たちのことです。

「サフラジェット」という言葉は、こうした一連のフェミニズムの活動家の流れの中で、面白おかしく言われたりして、一部の人は、「フェミニストである」ということをバカにしたりします。ですが、若い女性ほど、自分がフェミニストで、自分の信条のために立ち上がることを恐れない傾向があると思います。

投票率そのものについては、正直政治の構造的な問題というのが大きな影響があると思います。比例代表制を取っているイギリスは、Yes/Noの票を集めるといった投票結果とは違って、複雑なのです。

■フェミニズムに「第四の波」

映画の中で使われた、サフラジェットたちが当時身につけていた腕章やメダル(レプリカ)

映画の中で使われた、サフラジェットたちが当時身につけていた腕章やメダル(レプリカ)

――女性の解放運動のインパクトや、フェミニストたちの行動力は減っているのではないでしょうか。

いえ、私は今もフェミニズムの活動はとてもアクティブだと思います。この映画の時代、参政権の獲得を求めた活動が、フェミニズムの第一の波だとすると、第二の波は機会均等、賃金の均等、そして第三の波が、セクシャリティやダイバーシティーといった個人の自由に関することの活動や発言です。

そして今、我々はフェミニズム第四の波にいると思います。この第四の波こそ、ソーシャルメディアと深いかかわりがあると思っています。

小さな、とても個人的な問題を、他の人々がフォローし、社会問題になるという活動です。その典型的な例は、イギリスで起きた「No More Page 3」キャンペーンでしょう(※2)。このようなフェミニズムの第四の波も支援し続けるべきだと思います。

フェミニズムに関する活動をないことにすることはとても簡単です。ですが、今の若い女性たちは、とても活動的だし、SNSはそれを助長する役割を果たしていると思います。

※2
イギリス大衆紙「The Sun」の3ページに掲載された、トップレスのグラマーな女性の写真の掲載に反対するキャンペーン

<インタビューを終えて>
エチオピアで生まれ、イギリスで人類学や政治、社会学など広く学び、社会科学の博士号を持つヘレン・パンクハースト氏は、静かな情熱を持った女性だ。現在、曽祖母である偉大な活動家「エメリン・パンクハースト」の名を引き継ぎ、「パンクハースト・センター」を設立。家庭内暴力にさらされた女性たちの支援に全力を注いでいる。

インタビュー中、「女性は、自分の生まれた『姓』を持ち続けることに意見を持つことさえしない」、という言葉が非常に印象的だった。現代に生きる私たちが、どれだけ恵まれた環境に置かれているのか、そしてその恵まれているも、未だ不完全な環境に置かれていることに、私たちはこれからも疑問を持ち続け、声を上げ続ける必要がある。

◆映画「未来を花束にして」
1月27日、TOHOシネマズ シャンテ他にて全国ロードショー

2017年1月26日(木)20:37

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