環境や食の安全について今までより深く意識する人たちが増え始め、マーケットにもその影響が出てきていると思います。昨年11月にビックサイトで開催した「第一回オーガニックライフスタイル EXPO」には2日間で約20,000人の来場者があり、オーガニックに関する社会的な関心の広がりを実感しました。
欧米では、オーガニックへの関心は、コスメやファッションなどが牽引した歴史があります。ライフスタイルに変化が生まれ、有機農業や食に対する意識の変化につながりました。
今、日本も同じ動きがあります。大きいスーパーなど総合量販店よりも、地域性や消費者に密着した量販店の人気が出てきているのはその影響です。有機農産物・オーガニックがもう一度評価されて、マーケット的にも広がっていくタイミングではないかと思います。
――1%未満というのは驚きました。私のまわりでもライフスタイルとしてオーガニックに関心が高い人は増えていると感じます。しかし、関心を持っていても、オーガニックの農産物を購入する人はまだまだ少ないと思います。有機農産物は農薬を使わない分の手間とコストが販売価格に影響してしまうからでしょうか。
こうしたなか、購入者を増やし、有機農産物の割合を増やしていくためには何が必要でしょうか。
徳江さん:「らでぃっしゅぼーや」を作ってきた経験から思うことは、人は当然「良いものか悪いものかどちらを取るか」と聞かれると「良いもの」を取ります。さらに、なぜ良いかが納得できれば、購入しようと思います。しかし、良いと分かっても、それを手に入れる仕組みがないと購入できません。仕組みというのは、売り方やお店のことです。
ですから、どんな仕組みを持つか、そしてマーケティング的に有機農産物の何をどう伝え、どうしたら消費者の心に響かせられるかが重要になると思います。
「らでぃっしゅぼーや」を設立した1988年当時、政府の動きが追いついていないため有機農産物の販路は少なく、原則的に農家から全量買取が基本。欲しい人は小さなコミュニティーを利用しての共同購入などしか手立てがありませんでした。有機農産物が広がらなかった理由はこういうところにもありました。
そこで、「らでぃっしゅぼーや」では約10種類の野菜のセットを玄関口まで届けるという宅配システムを導入しました。どんな野菜が入っているか分からない面白さもあります。そういう便利さや他にはない特徴を評価してくれる人が何万人もいたわけです。
どういうものが心に響くかは、時代によって変わります。少し前は宅配でしたが、今は生産者とお店がきちんと結びついて、店頭でお客様の心を惹きつけるというコミュニケーション能力の高い売り方が求められていると思います。目利きによる仕入れと、確かな情報伝達、お客様とのコミュニケーションが生まれる仕掛けがある店に人が来ます。実際にそうした成功例が全国で出てきています。
――流通の仕組みや販売の仕掛けによって、有機農産物や安全な食品の需要が広がるということですね。
本当に良い野菜・おいしい野菜とは