森で働くという選択「森林の仕事ガイダンス」

林業従事者数は減少から横ばいに

2002年(平成14年)からはすでに「森林の仕事ガイダンス」という名称で開催しているので、今年で16回目の開催となる勘定になる。肉体的に過酷で危険が多くしかも儲からない産業である林業で働こうという人は少なく、林業人口は仕事離れや高齢化によって年々減少している。

一方で荒廃した森林の整備を進めるためには労働力が欠かせない。肉体労働ではあるが、自然を相手にする広範囲な知識やノウハウが求められる林業は一人前になるまでに10年以上かかるといわれている奥が深い仕事だ。この事業がスタートした頃には、優れた技術を持ったベテランが年々少なくなっているので、早く若者に技術を継承させないと日本の林業が廃れてしまうという切実な危機感が関係者の中にはあった。

しかし、事業が始まった頃は、ガイダンスを開催しても来場者が集まらず会場は閑散としていたこともある。また、若者よりも年配の求職者が目立っていた。最近では来場者も多く年齢層も大分若返っているように見受けられる。顔なじみの数人の担当者に話を聞いてみても若い人は増えているそうだ。また以前はかなり個性の強い就業希望者がいたものだが、最近は普通の人が多いという。林業が世の中に仕事として認知されてきているのかもしれない。

さて、林野庁のホームページのデータを見ると「緑の雇用」事業により林業労働力は減少からやや横ばいに変わりつつある。高齢化率(65歳以上の割合)は依然として高いものの若年者率(35歳未満の割合)は他の産業に比べて増加傾向にあり労働力の減少や高齢化に歯止めがかかっているといえる。初期の「緑の研修生」ももう10年以上のベテランになった。厳しい労働環境なので離職した者も多いが、残っている者は、組織の中で指導的な役割を果たしている。また、起業をして自分の理想とする林業を目指そうとする者も現れている。

林業を取り巻く状況は依然として厳しく、林業界だけで解決できない問題も多い。しかし、「森林の仕事ガイダンス」でのよき出逢いにより、多くの若者が林業の世界へ飛び込んでいくことで、林業界が変わっていくことに期待したい。

参考:森林の仕事ガイダンス 2017(全森連)  http://www.ringyou.net/guidance28/

参考:林業労働力の動向(林野庁) http://www.rinya.maff.go.jp/j/routai/koyou/01.html

フリーランスのコピーライター。「緑の雇用担い手対策事業」の広報宣伝活動に携わり、広報誌Midori Pressを編集。全国の林業地を巡り、森で働く人を取材するうちに森林や林業に関心を抱き、2009年よりNPO法人 森のライフスタイル研究所の活動に2018年3月まで参画。森づくりツアーやツリークライミング体験会等の企画運営を担当。森林、林業と都会に住む若者の窓口づくりを行ってきた。TCJベーシッククライマー。

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キーワード: #林業

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