なお、厚生労働省では障害者を雇用する事業主や職場の上司など、いわゆる「使用者」による障害者への虐待の状況や、虐待を行った使用者に対して講じた措置などについて公表しているので紹介したい。
なお、以下が主な結果となっている。
1 通報・届出のあった事業所は、1,325事業所
2 使用者による障害者虐待が認められた事業所は、507事業所
3 虐待が認められた障害者は970人
4 虐待を行った使用者は519人
5 使用者による障害者虐待が認められた場合に労働局がとった措置は978件
では、虐待を発見した場合にはどのように対応すればよいのだろうか?
■「虐待」を通報する
「虐待」を受けたと思われる高齢者・障害者を発見した人が、区市町村に通報すべきことが定められている。周囲の人が皆で見守り,早期発見,早期通報することで、「虐待」を防ぐことができる。
■通報したことを知られたくない・・・
通報を受けた区市町村の職員には,守秘義務が課せられている。また、通報した施設職員が通報等をしたことにより不利益な取扱いを受けないことが、法律で定められている。
■どこに通報したらいいかわからない・・・
区市町村の高齢者,障害者の担当部署や、最寄りの「地域包括支援センター」に通報・相談することができる。
こうした法律が成立し施行されることは、障害者の権利擁護の観点から大変喜ぶべきことだと言えるが、一方で、この法律自体が、社会にいまだ障害者差別、虐待があることを逆証しているとも言える。
法律によって虐待を罰し、未然に防ぐための対策に力を注ぐよりも、同じ社会で生活する人間として、当たり前のように障害者の権利が守られ、虐待が起こらない社会や文化を創っていくことこそが、本来の社会のあるべき姿であり根本的な民主主義の価値といえるのではないだろうか?