映画でできること、映画でしかできないこと

国の制度といえば、貧困とつながるものとして生活保護を思い浮かべます。生活保護がテーマの一つに据えられた別の映画が数年前に公開されました。『ダブリンの時計職人』というタイトルの作品です。

このタイトルには時計職人という、一人の職業人を表現する言葉が付けられています。それで、時計職人であった主人公の人生についての何かが描かれた映画であろうと想像してしまいますが、この映画のオリジナルタイトルは『Parked』。

日本語に翻訳すると「駐車」となり、もっと直接的に言えば、駐車した車のことをタイトルにしているのがわかります。

英語を直訳した「駐車」というタイトルですと、私たち日本人にはイメージがわかないかもしれませんし、観たくなる映画のタイトルにはなりにくそうに思われます。それは、配給会社の戦略としては好ましくありません。

この映画の主人公は自宅の代わりに車で寝泊まりして日々の生活を送るというライフスタイルを持っています。つまり、その車は彼の家なのです。厳密に言えば、彼はホームレスです。

手厚いとされているイギリスの福祉も、この映画を観ていると、行政の窓口の型どおりの対応や規格外れを許さない杓子通りの書類のやりとりだけになっていて、その申請をする当事者には救いの手は近づいてきません。

もはやイギリスの福祉でも救わなければならない人々の生活を支えることができない現状にあるのだと気付かされます。

チャリティとしての映画

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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