「人はなぜ森をつくるのか」。その理由を考えてみた

森をつくる理由

2017年2月に行った森ライの植林活動(千葉県山武市 蓮沼殿下海岸)

植物が光合成により二酸化炭素を吸収し酸素をつくることは、誰でも知識としては知っていることだが、植物がなくなったら酸素がなくなるという風にはあまり考えないだろう。確かにひと山、ふた山の木を伐ったところで急に酸素が薄くなるわけではない。

しかし、100億本、200億本、いやいやそれ以上になったらどうだろう。そんなことは絶対に起きないと言い切れるだろうか。もちろん光合成をしているのは陸上の植物だけではない。海には膨大な植物性プランクトンが生息しているから、地上の植物がなくなったって酸素が供給されないことはない。

しかし、人間というのは自分たちが思っているほど環境変化には強くないのではないだろうか。地球環境は、宇宙的視野で見れば剃刀の刃の上のような絶妙なバランスの上に成り立っているように思う。その環境を損なうような行動は慎むのが賢明というものだ。

日本は植物の生育に適したなの気候なので、空き地があればすぐ雑草が生えてきて、いずれ樹木も生えてくる。だから豊かな森があり、きれいな水があるのが当たり前と思ってしまう。自然は大きな力をもっているが、その力を貯めるためには膨大な時間がかかる。失ってはじめてその偉大さに気づいた、というのでははいけない。手遅れになる前に森に少しでも恩返しをしておくべきだ。

森をつくる(守る)理由は、私たち、いやすべての地球上の動物たちが持続的に生存できる環境を維持するため。これはけっして大げさなことではないと思う。森の大切さを人々に伝えていくのも森のライフスタイル研究所の大きな使命だ。

さて、林野庁のホームページをみると森林の有する多面的機能として「生物多様性保全」、「地球環境保全」、「土砂災害防止機能/土地保全機能」、「水源涵養機能」、「快適環境形成機能」、「保健・レクリエーション機能」、「文化機能」、「物質生産機能」の8つがあげられている。

しかし、実際は森林の価値は8つの機能の中の一つである「物質生産機能」、すなわち木材などを産み出すことのみで評価されている。材価が下がれば、森林の経済的評価も下がり、価値がないものとみなされ放置されている。経済価値以外の大きな価値を見出し、森を守り育てていくにはさらなる市民の力が必要だ。

 

フリーランスのコピーライター。「緑の雇用担い手対策事業」の広報宣伝活動に携わり、広報誌Midori Pressを編集。全国の林業地を巡り、森で働く人を取材するうちに森林や林業に関心を抱き、2009年よりNPO法人 森のライフスタイル研究所の活動に2018年3月まで参画。森づくりツアーやツリークライミング体験会等の企画運営を担当。森林、林業と都会に住む若者の窓口づくりを行ってきた。TCJベーシッククライマー。

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