大手電力、法人営業で「不当廉売」まがい大幅値引き

別の法人案件では、PPSとの契約が決まりそうになったところで、その3日後に、大手電力会社が3%安い見積もりを出してきて、契約を奪われたとの報告もある。

埼玉県にある市役所庁舎の入札案件でも、PPS各社が従量単価18円前後で入札したところ、東京電力はそこから15%も低い価格を提示し落札、契約を継続した。

いずれのケースも、大手電力が出してきた価格は、電源を市場調達に頼る新電力にとっては原価割れのレベルだ。あるPPSの経営幹部は「大手電力は大多数の従量単価が高い契約を残し、特定のユーザーだけに格安の料金を提示している。これでは結局、国民が自由化の恩恵を得られない」と憤る。

そもそも電力の売買契約には、個別の相対取引と入札がある。前者の場合、競合他社の仕入れ価格より安い価格で販売した場合には、独占禁止法が処罰の対象とする「不当廉売」に当たる可能性がある。後者の場合でも「略奪的安値応札」として、監視の対象になることがある。

公正取引委員会競争政策研究センターがまとめた報告書「低価格入札に関する研究」によると、「市場からのライバルの撤退・参入阻止を目的とした『略奪的安値応札』は、社会厚生を悪化させる戦略的行為である可能性がある」として事例が検証されている。

◆電力システム改革に内外無差別の原則を

松村敏弘・東京大学社会科学研究所教授(電力システム改革専門委員会委員)に聞く

松村敏弘・東京大学社会科学研究所教授(電力システム改革専門委員会委員)

電力システム改革は、全体としては最初に描いたグランドデザインを元に着実に進んでいる。ただ細部で停滞している面がある。圧倒的に遅れているのは、これまで総括原価方式と地域独占、そして公益事業社特権に守られてきた旧一般電気事業者の改革だ。(聞き手:オルタナ編集長・森 摂、構成・写真:高橋 真樹)

公正な競争環境をつくることが重要だが、発電部門や送配電部門などの上流部門で圧倒的な力を持つ旧一般電気事業者がその独占に近い状況を利用してしまうと、競争が妨げられ消費者の得られる恩恵が限定的になってしまう。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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