本来の自然を子どもたちに伝えていく

林業地とは違う、自然の森に触れる機会をつくる

――林業が人間の営みにおいて、重要であるということは承知しています。一方で、子どもに密接に関わるブランドとして、子どもたちに「本当の自然とはどういうものか」を知って貰うこともこの地球の未来にとって重要だと思います。

林業地、つまり、人が材木にするために植えた杉やヒノキの山を「自然」だと思っている人たちが少なくないと思います。私も子どもの頃は、旅行などで山を見るとそれが自然だと思っていました。そうではない森というものを子どもたちに知って貰いたいです。

水谷さん:そうですね。産業としての森だけではなく、森林というものがどのような多様性があるかを子どもたちに伝えることは大事なことです。

more treesが携わっている長野県の小諸市にある森には、そういう手つかずの一角があり、多様な生物が生息する循環システムが自然にできています。

more treesは今年で10年目を迎えました。これまでは、林業を応援したいという気持ちで取り組んできました。でも別の方法でも、森をつくるということをしていけるのではないでしょうか。

森の中には、材木にならない木の森もありますし、アクセスが悪くて手入れできないようなものもあります。そうした場所を活用できるのではないかと思います。

実際に、そうしたいと考える山主さんもいます。日本では、戦後の造林政策の一環で、材木用のスギやヒノキが多く植えられました。山の急傾斜地に木を植えた山主さんの中には、育った木を伐採して出荷した後、再び材木用の木を植えるのではなく、元の自然の姿に戻したいと考える人もいるんです。

林業や間伐は大切ですが、時として、自治体や森林組合が補助金を使い間伐することで、延命措置のようになっているような節もあります。林業や間伐だけでなく、地域にあった森を育てるという方法を考えることも良いかもしれませんね。

――自然を守る、山を守るというのは長い時間がかかることで、生産性や効率だけを求められるものではありません。山を手入れするのに補助金に頼らざるをえない地方の大変さもあると思います。

そんな中、more treesさんの行っている企業と森を結びつける保全活動や、間伐材の商品をつくるというのは、未来に必要とされる役割だと思います。

水谷さん:林業をやっている人にしても、木材の流通においてもそうですが、目の前しか見えていないことがあります。

それに森林組合などはホームページのないところもあり、プロモーションをかけるということができていない場合が多いです。

木材価格を1円でも上げようとか、ブランド価値を高めようという発想が十分でないという課題があるんです。

私たちはそういう課題を越えて、森や自然を身近なものにしていきたいと考えています。

ところで、明治神宮の森は基本的に常緑広葉樹で、ドングリが沢山落ちるんです。NPO法人響という団体が、そのドングリから苗木をつくり、イベントなどで配布しているんですよ。響は神宮を案内しながら、この森の生態や歴史を講義するグリーンウォークという活動も行っています。

more treesが考える、森と人との距離

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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