「聞こえないからこその強み」を生かせる社会に

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社会課題を解決するビジネスアイデアを披露する「みんなの夢AWARD8」が2月26日、舞浜アンフィシアターで開かれた。ファイナリスト7人は約2000人の観衆を前にプレゼンテーションを行った。その結果、「聞こえないからこその強みがある」と訴えた尾中友哉さんがグランプリに選ばれた。(オルタナ副編集長=吉田広子)

会場にいる両親に手話で感謝を伝える尾中友哉さん

尾中さんは聴覚障がいのある両親を持ち、手話の家庭で育ったため、自身は耳が聞こえても4歳まで話すことができず、友達とコミュニケーションを取るのに苦労した。

「自分の舌を指差す、これが最初に覚えた言葉。これは『お腹がすいた』という意味です」(尾中さん)

プレゼンテーションのなかで、尾中さんは「コミュニケーションが取れないと人は孤独を感じる。社会から孤独をなくしたい」と訴え、「本当のコミュニケーションとは何か。本気で伝え、本気で相手を理解しようとすることではないか」と投げかけた。

尾中さんは、聴覚障がいを持ちながら喫茶店を経営する母の背中を見て育った。「聞こえない分、人の表情から感情を読み取る能力が高く、ちょっとした変化にすぐ気づく。少し様子が違ったら『何かあったのですか』と紙に書いて尋ねる。そうしたきめ細やかな気遣いは評判が良い」と説明する。

喫茶店の開業に対し、母は周囲から反対ばかりされた。だが、実際に経営してみると10年間ずっと黒字で営業している。

「『聞こえないからこその強み』があるはず」。尾中さんの言葉は力強い。

尾中さんは株式会社Silent Voiceを立ち上げ、声や言葉を使わない「無言語コミュニケーション」プログラムを開発。これまでに企業研修として約40社に提供した。研修を受けた人から「久しぶりに部下の目を見た。指示したとおりに動いてくれないとばかり思っていたが、部下の考えていることを理解しようとした」と聞き、手応えを感じた。

グランプリを受賞した尾中さんは、結果発表を受けて「心の底からやる気が湧いてきた。両親がきっかけをくれた」と涙を浮かべた。「生んでくれてありがとう」。会場にいる両親に手話で感謝の気持ちを伝えた。

■ローカル鉄道の力で地域を元気に

準グランプリに選ばれた竹本勝紀さんは、税理士事務所の代表と、銚子電気鉄道株式会社の代表を務める。銚電の経営は赤字ながらも、竹本さんは本格的なおばけやしき電車、イルミネーション電車、電車プロレスなど工夫をこらしてきた。

千葉県銚子市の人口は減少し続け、竹本さんは「このままでは街が消えてしまう。首都圏にありながら、消滅可能性都市として危機的な状況だ」と説明する。そこで、竹本さんは「ふるさと運転士」事業を立ち上げ、免許を取得した鉄道ファンに本物の電車を運転してもらい、新たな生きがいづくりとふるさと貢献を両立させるプランを計画。「ローカル鉄道の力で地域を元気にし、日本を明るくしたい」と夢を語った。

このほか、ファイナリストとして、日本初のガイド育成専門事業の立ち上げを目指す岩井友美さん、三重県白子で伊勢型紙職人を体験できるゲストハウス「テラコヤ伊勢型紙」を運営する木村淳史さん、究極の塩だし「そば助」を展開しながらシングルマザーや貧困家庭支援に取り組む八木大助さん、「DIT(do it together/一緒につくろう)」をコンセプトに掲げ、「空間づくりワークショップ」を企画運営するくわばらゆうきさんがプレゼンテーションを行った。

グランプリ受賞者には、最大2000万円の出資交渉権と「夢支度金」100万円が贈られる。さらに、ファイナリストは、夢に共感した協賛企業からの支援も受けられ、夢の実現に向けてさらなる一歩踏み出す。

2018年2月27日(火)18:56

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