世界自閉症啓発デー、ヘルプマークへの期待

このヘルプマークに期待する役割としては、公共の場で誤解が生じることを減らせるのではないかと思う。外見からみて分からない障がいや困難がある場合、公共施設でハンディキャップ専用の駐車スペースやトイレなどの使用にあたり「ズル」をしていると誤解されることもしばしばある。

しかし、聴覚過敏のある子どもを育てるにあたり、公共のトイレでは何度も泣かされて来たのがハンドドライヤーである。何人もの人が使うトイレではいつ誰がハンドドライヤーを使うのか、そもそも見張っておくことなどできない。子どもの近くでハンドドライヤーを使用する人を見かけた時は、急いで子どもの耳を塞いだ。そうしなければ突然走り出してどこかに行ってしまうからだ。その先に車が走っていない保証などない。

常に危険ととなり合わせという点では、車を駐車した際に、反対側から子供がドアを開けて飛び出してしまうことに注意をしなくてはいけなかった。例えば、高速道路のサービスエリアなどでハンディキャップのエリアに止められなかったら非常に危険が伴う。しかしそれも何事もなければ車を降り、普通に歩いてサービスエリアのお店の中に行くことができる。そこで周囲の目は「ジョウシキのない人たちだ」と思われる。

公共の場で子どもが大きな声を出したり人目を引くような行動をとったりするとき、それがその子どもの五感の特性によるものだということは、周囲の人にはわかってもらいにくい。例えば、苦手な音や突然の出来事。そんなとき、母親は、「大きな声を出し続ける子どもをなぜ黙らせないのか」という周囲の目と、落ち着くまで待たねばならぬ忍耐との狭間にいる。何度も今困っているというサインを周囲に出した。だから待ってくださいと。

外見からみて困っていることが分かりにくいオーティズムのある人にとっては、「ヘルプマーク」がそのようなお互いの誤解や嫌な空気を作り出さないようにする役割を果たしてくれたらと思う。

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..