もう一つの営農型太陽光、ソーラーシェイディング

極めて有効だと思います。なぜなら耕作放棄地は、その狭さ故の経済効率の悪さで放棄されたからです。日本の耕作放棄地の多くが100平方㍍以下なので、狭い面積でも実装可能なソーラーシェイディングと合っています。
 
耕作放棄地の9割はソーラーシェアリングで、米や麦、トウモロコシなどカロリーに資する作物を栽培すればよいでしょう。残りの1割を、ソーラーシェイディングでハーブやキノコ、薬草など健康に役立つ作物を作ろうと思っています。

■危機はエネルギーにあり

─パネルの下で栽培すると収穫量が増えたという実証実験の結果も出たそうですね。
 
昨年、山梨県北杜市で実証実験としてこの装置の下でペパーミントを栽培しました。パネルの下と外でそれぞれ500個の種を植えたところ、パネルの下で発芽した数は367個で、外では218
個でした。発芽するのに要した日数は、パネルの下が18日で、外が22日かかりました。1カ月の成長率も数センチほど違いました。

農水省は耕作放棄地対策として戦後から米国型の大規模農業を提唱してきましたが、その理想は全くと言っていいほど実現していません。
 
それよりもオランダ型の施設園芸を参考にするべきです。大きな国土を持つ米国に対して、オランダは九州地方とほぼ同じ面積。農産物を輸出できる国となった要因は野菜工場と呼ばれる施設型園芸を始めたからといわれています。

私は日本農業を復興させるためには、発電と営農を掛け合わせる必要があると考えているので「電園復耕」という言葉を使っています。
 
日本農業について話をすると、よく食料自給率が40%を切ったから「食料危機だ」と騒がれますが、そんなことはありません。平成28年度のカロリーベース食料自給率は38%ですが、その計算では、1人1日当たりの国産供給熱量(913㌔㌍)を1人1日当たりの供給熱量(2429㌔㌍)で割っています。

割っているのは、供給熱量です。1人1日当たりの必要熱量ではありません。そもそも、国民の平均カロリーの必要量が2400以上もあるわけがありません。この数字を多くの人が誤解してとらえていると思います。
 
食料供給のうち62%が輸入に頼っていますが、日本に食料がないからではありません。車も同じで、外国社製の車が輸入されるのは、日本製の車がなくなったからではな
く、外国社製の車を好む人が増えてきたからに過ぎないのです。
 
その結果、食料の供給過多が起き、耕作放棄地が増え、後継者不足の問題へとつながっています。
 
危機は、食料ではなく、エネルギーにこそあります。世界5位のエネルギー消費国ですが、自給率はわずか7%。燃料がなくては、お米も炊けません。いまこそ、耕作放棄地をエネルギー田として活用すべきです。

吉田 愛一郎(よしだ・あいいちろう)
GreenT会長。現在は早稲田大学大学院
環境エネルギー科に通い研究を行う。東アフリカでは野生動物の保護活動を、ケニア、ナイロビ、ダゴレッティ地区では孤児院(グリニッシュハウス)を建設。日中の会社をクライアントにコンサルタントとして、自然エネルギーの研究も行う。

※この続きは、オルタナ52号(全国書店で発売中)掲載の「社会イノベーションとお金の新しい関係」でご覧ください。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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