アナン元国連事務総長が世界に遺した二つの贈り物

その結果、UNGCは2000年7月に正式発足した。「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」に関わる10の原則について、企業や団体がその順守を「約束」し、国連に報告する。世界での署名団体は12000以上に達し、日本ではキッコーマン、リコー、三井物産、伊藤忠商事など287の企業・団体が署名した(2018年8月20日現在。詳細はグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンのサイト参照)。

グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの有馬利男代表理事(元富士ゼロックス社長)は、アナン氏が二度来日した時に直接、言葉を交わした。「グローバリゼーションには光と影があることを強調していた。企業にはしっかり取り組んでほしい、力を貸して欲しいと言っていた。そして世界中のビジネスパーソンや経営者に将来に向けての生き方を教えてくれた」と懐かしむ。

そのグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンは今や、日本でSDGsの最大の推進役の一つである。この3年、日本企業やメディアに呼び掛け続け、その重要性を説き、SDGsの認知度を高めてきた。

SDGsは2015年を起点に、2030年を目標年とした国際目標だ。その前身であるMDGsは2000年を起点に、2015年をゴールにした目標だった。いわば、アナン氏が遺した贈り物が今、サステナビリティ(持続可能性)という大きなうねりになって、企業や政府・自治体に大きな影響を与えているのだ。

2015年は「サステナビリティ元年」と言うべき年だ。SDGsが国連で採択されたのは9月25日。その3日後の28日には、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国連責任投資原則(PRI)に署名し、日本のESG投資の流れを決定づけた。

10月14日にはトヨタ自動車が意欲的な環境目標「環境チャレンジ2050」を発表。さらにその2か月後(12月12日)には、気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で「パリ協定」が採択された。

わずか3カ月の間に「サステナビリティ」という共通のゴールに向けて、大きなマイルストーンが次々と置かれたのだ。その道筋を付けたのが、ほかならぬアナン氏だったといっても過言ではない。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #サステナビリティ

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