その代わりに出てきたのがSDGsです。いま日本では、政府がSDGs未来都市(29自治体)を選定したほか、多くの自治体で「SDGs予算」が付く動きもあり、いま急速に地方に浸透しつつあります。
ただ、そこには予算を取り込もうという算段が先に立ち、SDGsの本質を理解する努力が足りていない事例も散見されます。SDGsの本質は、顧客、取引先、すべてのサプライチェーン、地域社会、NGO/NPOなど、あらゆるステークホルダーとエンゲージメント(中長期的に良好な関係を築くこと)を築き、「社会の声」を聞くことです。
それが自社のCSRリスクの予知・予防・低減につながるとともに、新たなビジネスの創出につながるのです。そのためにも、改めて「ステークホルダーダイアログ(対話)」が重要です。これまでの日本企業のダイアログは海外から見てガラパゴス的であり、年に1度、識者を招き円卓会議を開くという「儀式」が少なくありませんでした。
そうではなく、日常のプロセスとして地域社会やNGO/NPOと意見を交換し、要請に応えることが大事なのです。形だけでのSDGsでは、いずれ死語になる時が来ます。私たちが2030年まで真剣にSDGsに取り組めるか、逆に尻すぼみになるか。いま私たちはその岐路に立たされています。
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CSRやサステナビリティの関心が高い経営者やビジネスパーソンのネットワークを目指して、私たちは2014年、「一般社団法人CSR経営者フォーラム」を立ち上げました。
2019年4月23日、その5周年の例会「2019春」を東京で開催します。例会では、森本英香・環境事務次官に「第5次環境基本計画とSDGsー地域循環共生圏を中心に」と題して私(森)と対談して頂く予定です。
LOHASやCSVなどその時々の流行(はやり)言葉に惑わされず、経営者自らがサステナビリティについて深く洞察し、行動していく。そんな企業が増えれば、日本もこれから訪れるであろう、社会や経済の大波を乗り切っていけると信じています。