原田勝広の視点焦点「SDGsは冷戦終焉の贈り物」

きっかけは東西冷戦構造の終焉、ベルリンの壁の崩壊でした。1989年のことです。今思うとウソみたいですが、当時「米ソの対立がなくなり、これからは国連の時代だ」と言われたものです。しかし、予測は見事にはずれました。

国連軍が存在しない中、国連は地域紛争にPKO派遣で対応しようとしましたが、荷が重すぎました。世界の安全保障は相変わらず米国、ロシアなど大国に委ねられたのです。

しかし、国連はしたたかでした。核戦争の危機がなくなれば、これからの世界にとって重要なのは非軍事的な課題だと察し、安保理(安全保障理事会)とは別に経済社会理事会を活性化させ、地球規模の経済問題、社会問題に焦点を当て、リーダーシップを発揮したのです。

1992年に地球サミットと呼ばれる環境開発会議(リオデジャネイロ)で気候変動枠組み条約、生物多様性条約を決定したのを始め、世界人権会議(ウィーン)、国際人口開発会議(カイロ)、世界女性会議(北京)、国連人間居住会議(イスタンブール)と90年代次々に世界会議を開きました。

グローバル化の負の側面の克服と同時に、今後深刻化するであろう地球環境、貧困削減、ジェンダー問題などに取り組む姿勢を明確にしたのでした。

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原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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