ネオニコ、母親から胎児に移行:研究者が初の実証

論文では「一般人の尿および毛髪からのネオニコチノイドおよび代謝物の検出が頻繁に報告されている。しかし、この化合物に感受性が高いと考えられる胎児および新生児のスクリーニング検査の報告はない。発達途上の脳の血管は成人と比べて脆弱で、薬物や毒物、病的状態の影響を受けやすく、将来の脳の障害や神経疾患をきたしやすい」としている。

市川医師は、2017年3月に米国・フロリダで開催された国際学会で、ネオニコチノイドと自閉症が関連している可能性があるという発表を聴いた。自身も小児科医であり、自閉症や発達障害の子どもが明らかに増えている実感があり、農薬との関連を研究している。

現在さらに胎内での農薬の影響を確認するために、約300人の妊婦の協力を得て、妊娠中の母親の尿や出産後の臍帯(さいたい)血、母乳、新生児の尿と新生児の出生児の体格などを調査している。今年中には結果が出る予定だ。

また研究グループのひとりである北海道大学大学院・池中良徳准教授は、農薬の安全性を製造販売後に再検証する仕組みを構築中だという。

市川医師は「もし子供のこと、将来のことを考えるなら、政府が無農薬の穀物やその製品を生殖可能な世帯に優先的に配布する、もしくはその差額などを給付するとよいと思う。また補助金を出すなどして、無農薬の作付面積を増やすような政策が進むことを期待している」とコメントした。

 

論文「極低出生体重児の出生直後の尿のLC-ESI/MS/MSによるネオニコチノイド分析」
LC-ESI/MS/MS analysis of neonicotinoids in urine of very low birth weight infants at birth(PLOS ON / 2019.7.1)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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