山脇氏は「1989年に国際取引が禁止されたが2011年から密猟が増え,2011−2012年に地球のアフリカゾウの10パーセントが消費された」と説明。「日本人の力でこの状況を変えたい」と力を込めた。
両団体によると、日本の象牙消費の8割が印鑑で、問題はそれを何気なく実用品として消費していることだという。日本では象牙密輸の問題を知らない人が多いが、こうした事実を知れば「ほとんどの人が買わなくなる」と見ている。
山脇氏は、印鑑をモチーフにして象牙問題を訴える動画Hankographと、著名人のアンバサダーで一般の関心を惹きたいと考える。会見にはアンバサダーの書家・書道家の岡西佑奈氏、パラリンピック銀メダリストの上原大祐氏も出席した。
朝日新聞の記者としてアフリカに駐在していた三浦氏は、アフリカゾウが激減するのを目の当たりにし、東アフリカで取材を行った。
テロ集団「アルシャバブ」に襲撃された生存者から「アルシャバブの資金源の4割が象牙売買だ」と聞き、「ゾウの牙に金銭価値がつく限り密猟は続き、テロリストの資金源になる可能性がある」と指摘した。
坂元弁護士は、世界の動きと日本政府の考えの違いを説明した。象牙取引は1989年にワシントン条約で国際的に禁止されたが、日本は1999年と2009年に例外的にワシントン条約の認可を得て象牙を輸入した。
しかし2006年から密輸が増え、2010年から2万頭のゾウが殺されていたことが2013年に発覚し、象牙に対する世界の目がより厳しくなった。
2016年、ワシントン条約第17回締約国会議で、アフリカ32カ国とアメリカの連合体が、全ての国が国内象牙市場を閉鎖することを勧告し、全会一致で採択された。
しかし日本は「我が国は万全の管理をしており、違法取引にも密猟にも一切関係していないので、この対象にはならない」と主張し、それが今も続いている。
象牙業界で影響力があるのは、いわゆる「街のハンコ屋さん」ではなく、大量の未加工象牙のストックを持ち、主に印鑑を作る製造業者だ。30年以上前から通産省、経産省に強いパイプがあるという。ワシントン条約の時も強力なロビー活動を行った。
8月17日―28日、スイスのジュネーヴで「ワシントン条約第18回締約国会議」が開かれる。日本政府は従前の方針を貫くとみられるが、坂元氏は「32カ国の連合体が日本に市場閉鎖を要求するだろう」と予想する。ジュネーヴでの交渉に注目していきたい。