なぜ資生堂は「文化」を重視するか(中畑 陽一)

2.「文化」を尊ぶ資生堂

資生堂の企業活動、あるいはその信念を特徴づけるものに、「文化を育てる」姿勢が挙げられます。資生堂の中期戦略サステナビリティの重点項目のひとつに「アート&ヘリテージ」が掲げられていますが、資生堂は文化芸術支援に極めて積極的であり、日本最古のギャラリーである資生堂ギャラリーや、静岡にある資生堂アートハウス、資生堂企業史料館など、多くの施設を運営し、一般開放しています。さらには、経営哲学や経験知を広く社会に共有するためのアーカイブの構築まで行っており、「文化を育てる」取り組みが際立っています。

その起源は、初代社長である福原信三氏が、社長になる前に文化の都ともいえるパリでカフェー文化に触れ、芸術家たちと語り合い、文化・芸術の重要性を感得したことに始まると考えられます。資生堂の文化・アートへの感性が時代を超えて受け継がれていることを象徴するように、そのロゴは1928年に確立されて以来、ベースはほとんど変わっていません。

しかし、文化は経済的合理性と対極にあるといっても過言ではありません。CSRでもSDGsでもなかなか「文化」という言葉は出てきません。それくらい一見人の役に立たないものととらえられてしまいがちです。それでも資生堂が文化を重視するのはなぜでしょうか。

つづく(次回は9月中旬を予定)

参考
*資生堂WEBサイト https://www.shiseidogroup.jp/company/philosophy/
*資生堂百年史
*資生堂企業史料館

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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