パーム油発電は社会・環境問題の「デパート」

パーム油認証制度が誕生するも燃料使用は想定外

パーム油の問題点については、1990年代からサラワク・キャンペーン委員会などの森林系環境団体が指摘していた。そのため、パーム油の消費量を減らそうという運動もあった。

しかし、あまりにも多くのもの(チョコレートやポテトチップスなどの菓子類、パン、マーガリン、マヨネーズ、インスタントラーメン、カレールー、洗剤、化粧品など)に「植物油脂」などの表記で使われており、消費者は他の選択肢を選びにくいこともあって、運動は盛り上がらず、消費量は増える一方だった。

このままではインドネシアやマレーシアの熱帯林が乱開発され、アブラヤシ・プランテーションだらけになってしまう――。こうした危機感が蔓延した2004年、WWFなどの支援により、非営利組織「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)が設立された。

RSPOは、泥炭地や野生生物の住む森の保全や、強制労働の禁止など、森にも人にも悪影響を与えないような持続的なパーム油生産に求められるさまざまな認証基準を策定した。RSPOの認証を受けたパーム油は、まだ問題点は指摘されるものの、現状では最も安心して使えるパーム油だといえる。

しかし、その生産量は、まだパーム油全体の2割弱だ。「燃料」として燃やすほどの量が、調達できるのだろうか。

また、WWFは、RSPOは燃料利用を想定して策定された制度ではないため、「RSPO認証パーム油では、燃料としての持続可能性は完全には担保できない」として、2019年7月、京都府舞鶴市で計画中の発電所計画の見直しと、燃料の持続可能性基準策定を求める要望書を経済産業大臣らに提出した。

■HISのパーム油発電所建設中止を求め、環境団体が署名活動

環境にやさしい暮らしを考える

栗岡 理子(編集委員)

1980年代からごみ問題に関心をもち、活動しています。子育て一段落後、持続可能な暮らしを研究するため、大学院修士課程に進学。2018年3月博士課程修了(経済学)。専門は環境経済学です。執筆記事一覧

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