IPPNW(核戦争防止国際医師会議、1985年ノーベル平和賞)ドイツ支部は、2017年7月に開始した「東京2020放射能オリンピック」という国際キャンペーンを紹介した。「放射線には、これ以下なら健康に影響がないといえる安全な線量は存在しないので、できる限り被ばくを避けるべき」などの、放射線や原発問題に関する正しい情報を広めるためで、世界中からの支援を募っている。IPPNWは、福島市での五輪競技をやめ、2020年3月26日からの聖火リレーは福島県外で実施することも要求している。
ハーゲン・シェアプさんは、ミュンヘンのヘルムホルツ協会における25年来の疫学調査結果を報告。チェルノブイリとフクシマの原発事故による放射性降下物が、長期的に遺伝子に影響を与えることがわかり、死産、周産期死亡、乳児死亡、先天性奇形、甲状腺がん(子ども、若者、成人)の増加が観察されているという。
これらの発表内容は、原発事故という大惨事以来、被災地を支援しながら、原発と核兵器廃絶のために活動を続けてきた参加者たちにとっては、周知の事実が多い。
しかし、日本では十分に報道されておらず、2010年に11位だった「世界報道自由度ランキング」が67位になっていることからも、言論の自由が制限されているのではないかという危惧が、会議採択宣言で表明された。
さらに同宣言では、「放射線被ばくの基準値を年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げて、避難区域だった場所に人々を帰還させ、原発事故の大惨事を克服したと見せかけるために東京五輪を利用している」と、日本政府の政策を批判した。国会議員のシルビア・コッティング=ウール(連邦議会環境・自然保護・原子炉安全委員長。3.11後に10回日本訪問)さんも、ビデオメッセージで同様の見解を述べた。
会議を主催した「公益団体 外国協会」所属の「ドルトムント独日協会」は、主にIPPNWドルトムント支部と協力して、毎年3月11日にフクシマデー、8月6日にヒロシマデーの行事を開催してきた。
参加者には、これまでに毎年、国際的な教育交流活動でもあるヨーロッパ・アクション週間「チェルノブイリとフクシマ後の未来のために」を企画運営してきたメンバーも多く、会議を共催したハインリヒ・ベル財団のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン支部は、来年3月に日本(東京と福島)でのアクション週間を予定している。
他の参加者も、この会議を足がかりに、来年の東京五輪報道で「フクシマの危険性や被災者の声を黙殺しないように」と、欧州のメディアにアピールするための準備とネットワークの強化を開始した。