ソニーが新たに「パーパス」(存在意義)を掲げた理由

社員のエンゲージメントを役員の評価指標に

——長期的な視点で経営していくために、役員報酬の算定基準にESGの要素を入れたのですね。

まだ割合としてはそれほど大きくはないのですが、事業担当役員の業績報酬を決める際は、環境や品質に対する取り組みを考慮しています。

毎年、環境と品質への取り組みを事業別に評価していて、一番貢献したところを社内で表彰しています。それをしっかり報酬にも加味しようということで、環境・品質領域で加点・減点をすることに決めました。

ソニーの中で、特に人材は重要な要素であり、社員がやる気を持って仕事をできているか、会社に対してどう思っているかを調べるために、大規模な調査を年1回グローバル規模で行っています。

ES(従業員満足度)を測ることが目的ではありません。働きやすい職場かどうかだけでなく、トップメッセージはクリアか、上司との関係はどうかということも調べます。この調査の結果を、昨年から役員の業績報酬の評価指標に入れています。

——社員のエンゲージメントの向上は、どの企業にとっても重要ですが、非常に難しいことだと思います。実現のためには、何が必要だと考えますか。

まず、マネジメントから社員に対して、この会社はどこに向かっていて、あなたたち社員には何を期待しているのかを、できるだけ明確に共有することだと思います。

次に、健全な意味での「社員と会社の自立関係」がとても大事です。特に、ソニーは設立趣意書にあるように、歴史的に自由闊達な社風で、「個」を尊重してきました。日本企業に多い「右へならえ」とは違うと思います。

——役員の業績連動報酬の中で、エンゲージメントや環境に関する割合はどれくらいですか。

まだそこまで大きくはないです。ソニーの役員報酬は、ベース給として現金での定額報酬と、業績に応じたボーナス、ストック・オプションなどの株価連動報酬などがあるのですが、ボーナスは短期の業績、株価連動報酬は長期の業績を評価するものになります。

上位の役職の役員ほど、長期の業績に連動した報酬の割合が大きくなる仕組みになっています。

神戸司郎(かんべしろう)
ソニー株式会社 執行役、常務
1984年 4月 ソニー株式会社 入社
グループ戦略部門長、広報センター長を経て現職
法務、コンプライアンス、広報、CSR、渉外、品質、環境、情報セキュリティ、プライバシーを担当

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #CSR#ESG#パーパス

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