「給水スポットをもっと日本に」NGOの活動広がる

――給水スポットを増やす意義とは何でしょうか。

安全な水道水の確保は基本的人権であり、それにアクセスできる街の給水スポットは、公衆トイレと同様に必要なインフラです。ただ、常設の給水スポット整備にはコストと時間がかかるので、公共インフラを補完する民間の活動として、店舗などに給水サービスを呼び掛けています。

常設インフラへの橋渡しツールとして、冷たい水が飲めるオリジナルデザインの水道直結式仮設給水機(写真)を祇園祭や天神祭に提供し、かなりの反響を得ました。これらの活動のプラットフォームが、Refill Japanです。

――Refill Japanは、プロジェクトでなくプラットフォームですか。

給水スポットを広げるための、日本初の全国的なプラットフォームです。2019年5月に発足しました。英国の街で始まった市民活動「Refill」と連携して共通ロゴを使い、地域の人が確認した信頼できる給水スポットの地図を公式サイトに掲載しています。

日本の給水スポットは住宅地の公園にはあっても、繁華街には少ないのです。私たちの活動に参画してくれる企業やNPOや個人を募集しています。

このロゴが給水サービス提供店の目印

――エリア単位での「地域リフィル」の立ち上げを呼び掛けている背景は何ですか。

水道水を飲むことは地域の川や地下水を守る出発点になり、街のオアシスは新しいコミュニケーションの場にもなるので、自主的な取り組みが大切です。

安全な水道水の供給やごみ処理の責任を負う自治体が率先して会議で容器入り飲料の使用をやめたり、庁舎や公共施設内の飲料自販機を減らしたり、給水インフラを整備することは、SDGs達成への貢献にもなります。

海外には地域単位の取り組みの成功例が多いです※。

奈良県生駒市は、2008年から公共施設の飲料自販機を順次廃止して冷水機の設置を進めています。駅前広場にマイボトル給水もできる水飲み場を設け、深層地下水が4割を占める水道水を「おいしい生駒の水」としてアピールしています。こうした魅力的な事例が全国に広まれば、さらに面白い地域が出てくるでしょう。

※参照:『「脱使い捨て」でいこう!――世界で、日本で、始まっている社会のしくみづくり』(瀬口亮子著、彩流社、2019年)

Refill Japan「給水スポットマップ」

chiyosetouchi

瀬戸内 千代

オルタナ編集委員、海洋ジャーナリスト。雑誌オルタナ連載「漁業トピックス」を担当。学生時代に海洋動物生態学を専攻し、出版社勤務を経て2007年からフリーランスの編集ライターとして独立。編集協力に東京都市大学環境学部編『BLUE EARTH COLLEGE-ようこそ、地球経済大学へ。』、化学同人社『「森の演出家」がつなぐ森と人』など。

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