COP25前半:パリ協定 積み残されたルールの議論紛糾

■グレタ・トゥーンベリさんの到着と気候マーチ

世界各地で異常気象が観測された2019年は、気候「危機」や気候「非常事態」という言葉が頻繁に使われるようになり、それを受けて、若者世代が世界各地で声を挙げ始め、学校ストライキやマーチ(行進)を行った年でした。

そして、「未来のための金曜日(Fridays For Future)」と呼ばれるその運動の中心にいたのはスウェーデンの16歳、グレタ・トゥーンベリさんでした。

トゥーンベリさんは、第1週目の金曜日、12月6日にCOP会場に到着しました。前回のCOP24にもトゥーンベリさんは来ていましたが、その当時とは比較にならないほどの大きな注目を集め、彼女の行く先々で大量の人だかりができる事態となりました。

グレタ・トゥーンベリさんはメディアの大きな注目を集めている

同日には、マドリード市内で気候マーチが開催され、主催者発表で50万人とも言われる多くの市民やNGOが、気候変動対策を訴える行進を行いました。WWFのメンバーも、「今しかない!」と対策を訴えるバナーをかかげ、サポーターやボランティアの方々と共に行進に加わりました。

トゥーンベリさんも、マーチの参加者に向かってスピーチを行い、世界の指導者たちや政策決定者への行動を訴えました。

■全ては「野心強化」のために

COP25は、こうした会場の内外で挙がる声に応えるものでなければなりません。パリ協定の「ルールブック」の最後の詰めを行うことはもちろん大事ではありますが、同時に、各国に対策の強化を促すものとならなければなりません。COPでは、削減目標の引き上げを含む取り組みの強化を、しばしば「野心(ambition)の強化」と呼びます。

開会式のスピーチにおいて、アントニオ・グテーレス国連事務総長も「各国は、パリ協定の下での約束を誠実に守るだけでなく、野心を大幅に強化することが必要です」と呼びかけました。

その内外からの声に、COP25が応えるかを見る上で重要なのが、「1/CP.25」と呼ばれている文書です。COPでの議論は、最終的には個別議題に関する「決定」文書が採択されることで結実します。その際、論点ごとに番号が振られ、たとえば「COP25の決定文書8番」という意味で、「8/CP.25」というような記号がつけられます。

その中でも、「1番」、つまり、「1/CP.25」と呼ばれる決定は、例年、全般に関わる事項を入れ込む文書として扱われています。

2019年もこの決定には全般にかかわる内容が盛り込まれることになっており、第1週目から、議長国チリの下で協議が始まりました。そしてこの文書に、COP25として、各国に「野心の強化」を呼びかけるような文言を入れ込めるかどうかが議論になっています。2020年は、削減目標を含む国別目標(NDC)再提出の年です。そのタイミングに向けて、「野心の強化」をどれくらい強い言葉で表現できるかどうか。

専門的な論点に関する交渉が続く一方で、こうした「COPが気候危機に応えるような行動を各国に促すメッセージを出せるのか」は極めて重要な問題であり、WWFも、各国代表たちになるべく強い言葉を盛り込むように働きかけています。

「野心の強化」にむけて、第2週の議論が注目される

 

本稿は「WWFジャパン」ウェブサイトから転載

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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