COP25報告:史上最長の延長COP、3つのハイライト

【1】(2)「市場メカニズム/非市場メカニズム」以外の論点

市場メカニズム/非市場メカニズムを扱う「6条」以外にも、いくつか重要な議題がありました。

1つは、「損失と被害(loss and damage)に関するワルシャワ国際メカニズム」のレビューという議題です。この議題は第2週目に大臣レベルでの非公式協議の中で交渉が続けられました。

「損失と被害」とは、気候変動の影響が、適応対策が対応できる範囲を超えて発生し、実際に「損失と被害」が発生してしまった時に、どのような対応を国際的に協力してできるのか、という課題です。

交渉が難しかった理由は、この「メカニズム」の果たすべき機能の1つとして、資金支援を含めるかどうかについて、先進国と気候変動影響に脆弱な途上国の意見が対立していたためでした。

この議題については、最終的には対立の溝がうまらず、先進国に対して気候変動影響に特に脆弱な国々への支援(資金を含む)を行なうことを要請する一般的な文言が入った他は、GCF(グリーン気候基金)など既存の資金メカニズムとの連携を深めるための専門家グループの設立を決定するなど、部分的な取り決めのみとなりました。

もう1つは「共通タイムフレーム」と呼ばれる議題です。パリ協定の下で、各国は国別目標(NDC)と呼ばれる目標を掲げており、日本も「2030年までに温室効果ガス排出量を2013年と比較して26%削減する」という目標を掲げています。

「共通タイムフレーム」というのは、現行の各国の2030年目標の次、つまり、2031年以降の期間に関する国別目標(NDC)が、2035年までの目標となるのか、それとも2040年までの目標になるのかを決めるという議題です。

「共通の」目標年を定める、ということ自体は既にパリ協定で決まっていますが、それを「5年」=2035年、「10年」=2040年にするのか、それとも、「5+5年」=2035年+2040年にするのかについて、各国の意見が対立しており、決まっておりません。

この議題については、今回の会議でも結論を得ることができず、第2週目冒頭に次回の6月の補助機関会合に議論が延期されました。

さらに「第2次定期レビュー」と呼ばれる議題もあります。これは、基本的に最新の科学をどのようにこの体制の中に取り入れていくのか、という課題です。

あまり知られていませんが、前回の第1次レビューの結果として、パリ協定の有名な長期目標である「2℃より充分に低く、1.5℃に抑える努力を追求する」という目標は作られました。

今回は特に、このレビューのもう1つの役割である、「長期目標への進展をレビューする」という部分について、気候変動枠組条約の下の全ての約束を対象として、2020年までの(先進国からの)資金・技術・キャパシティビルディングなどの取り組みの不充分さを指摘したい一部の途上国と、それを避けたい先進国との間で議論が対立しました。

最終的には、「2020年までの努力の不充分さ」を検証する場については、別にラウンドテーブルが設けられ、そこからの報告を受け取る形で、2020年後半から2022年までの実質2年間に、開催されることになりました。

■【2】各国の温室効果ガス排出削減目標の引き上げ

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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