COP25報告:史上最長の延長COP、3つのハイライト

【2】(2)石炭に固執する日本の姿勢に批判が集まる

そうした中、日本は2回も化石賞を受賞しました。化石賞は、地球温暖化問題に取り組む世界120か国の1300を超えるNGOのネットワークであるCANインターナショナルが、温暖化対策に消極的な国に与える不名誉な賞。

毎日夕方に行われる授賞式は多くのCOP参加者が詰めかける一大イベントで、その様子は国内外のメディアを通して世界に発信され、SNSでも拡散されます。

石炭火力発電はどのように高効率であっても、天然ガスの約2倍のCO2を排出するため、気候変動の最大の要因のひとつです。

そのため、日本政府が国内で石炭火力発電の新設を進め、さらに公的資金で海外の石炭火力を支援している姿勢には、早くから世界の環境NGOが批判をくり返してきました。

それでも石炭火力に邁進する日本に対し、国連も警告を発し始めました。COP25直前には、国連環境計画(UNEP)が最新の報告書で日本に対して石炭火力発電を新設しないよう促し、COP25の開会式では、グテーレス事務総長が9月の気候サミットに続いて、ふたたび石炭火力発電の「中毒」から脱却するよう訴えました。

1回目の化石賞を日本が受賞した理由は、梶山経済産業大臣が記者会見で「石炭火力発電など化石燃料の発電所は選択肢として残していきたい」と発言したこと。この発言が、国内外のメディアに報道されるやいなや、世界の市民社会はCOP25の交渉を後退させる言動であるとして、即座に反応したのでした。

そして2回目の化石賞は、2週目に注目を集める小泉進次郎環境大臣が到着し、日本が大臣級会合でスピーチをしたときです。

小泉環境大臣は、日本の大臣としては初めてCOPにおいて「国際社会からの日本の石炭政策に対するグローバルな批判は認識している。グテーレス事務総長の石炭中毒からの脱却の訴えも、日本に対するメッセージと受け止めた」と率直に述べられ、今までにない真摯さは感じられました。

そして「本日は日本の石炭姿勢に何も進展は伝えられないが、自分を含めて多くの日本人がより気候対策をしなければならないと信じている」として無念さを滲ませていたのが印象的でした。

しかしいずれにしてもこのCOPでは、政府としてはゼロ回答であることには変わりありません。

小泉進次郎環境相は「国際社会からの日本の石炭政策に対するグローバルな批判は認識している」とスピーチした

実は日本は「パリ協定」の資金援助の基金に多額の資金を提供している国(累積拠出額世界第2位)で、本来は評価されることもしているのに、石炭にここまで固執することによって、石炭国としてのマイナスイメージばかりが先行しています。
これは世界の温暖化対策の推進にとって問題であるだけではなく、日本にとっても本当に得策ではありません。

【2】(3)全ては「野心強化」のために:COP25で決まった野心に関する決定

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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